顧問税理士から「顧問料を上げる」と言われた|値上げの理由は3つに分かれ、受け入れる前に確認することがある

「来期から顧問料を上げさせてほしい、と税理士から言われた。理由は人件費が上がっているから、とだけ」

顧問料の値上げそのものは、不当なことではありません。税理士事務所の仕事は人の手でやる部分が大きく、人件費が上がれば料金も上がります。ここ数年、インボイスや帳簿の電子保存で事務所側の作業が増えたことも重なって、顧問料は業界全体で上がっています。値上げを言われたこと自体に腹を立てる必要はありません。

問題は、値上げの理由が説明されているか、そして値上げ後に何が変わるのかが分かっているかです。「人件費が上がったので」の一言だけで、作業の中身も、自社にとって何が増えるのかも分からないまま払い続けるのは、値上げを受け入れることとは別の話です。この記事では、値上げを言われたときに、受け入れるか、交渉するか、変えるかを決める前に見ておくべきことを書きます。

顧問料はなぜ上がっているのか

税理士の顧問料は、事務所で働く人の時間で決まります。記帳、試算表、決算、申告書、届出、質問への回答。どれも人がやる仕事で、人件費が上がれば料金に跳ね返ります。群馬でも経理経験者の採用は年々難しくなっていて、事務所側の人件費はこの数年で明らかに上がりました。

それに加えて、事務所側の作業そのものも増えています。インボイス制度が始まってから、請求書や領収書を1枚ずつ登録番号の有無で分ける作業が加わりました。帳簿や領収書を電子で保存する決まりも、資料の受け取り方と保存の仕方を変えました。どちらも顧問先から見えにくい作業で、料金を据え置いたまま作業だけが増えていた事務所が多い、というのが実情です。

だから、開業時から一度も料金を変えていなかった事務所が、ここに来て値上げを言い出すのは自然な流れです。その点では、値上げを告げられたことは、事務所がおかしくなった兆候ではありません。見るべきは、値上げの理由がどれに当たるかです。

値上げの理由は3つに分かれる

値上げの理由は、聞いてみるとほぼ次の3つのどれかに分かれます。どれに当たるかで、受け入れ方が変わります。

1つ目:事務所全体の料金改定

顧問先の全社に対して、一律で料金を見直すケースです。理由は人件費と作業の増加で、自社の事情とは関係ありません。この場合、値上げ幅が常識的な範囲なら、受け入れるのが普通です。他の事務所に移っても、同じ理由で同じ水準の料金を言われます。確認するのは「値上げ後の料金で、何が含まれているか」だけです。

2つ目:自社の作業量が増えた

売上が伸びて取引の件数が増えた、消費税を納める会社になった、従業員が増えて給与計算や年末調整の人数が増えた、支店や新しい事業が加わった。こうした変化で、自社にかかる事務所の時間が増えたケースです。これは値上げというより、料金が実態に追いついただけです。ただし、この場合は自社の側で減らせる作業があるので、値上げ幅をそのまま受け入れる前に、後で書く確認をしてください。

3つ目:もともとの料金が安すぎた

開業したときに「最初は安くしておく」と言われた料金が、会社が大きくなってもそのままになっていたケースです。事務所から見ると、長く赤字で見ていた顧問先を、やっと通常の料金に戻す、という話です。これも受け入れる方向で考えるのが普通ですが、一度に大きく上がることが多いので、何年かに分けられないかは聞いてよい話です。

3つのどれにも当てはまらない、つまり理由を聞いても答えが返ってこない場合は、値上げの話とは別に、顧問の関係そのものを見直す時期です。理由を説明できない値上げは、作業の中身も説明できていないことがほとんどです。

月1万円の値上げで、年に何が変わるか

たとえば月額2万円の顧問料が3万円に上がるとします。年間で12万円の増加です。決算料が別にある契約なら、決算料も合わせて上がることが多く、年間では15万円前後の違いになります。

この12万円が高いか安いかは、値上げ後に何が加わるかで決まります。月2万円で年1回の決算だけだった顧問が、月3万円になっても年1回の決算だけなら、同じものに12万円多く払うだけです。一方、月3万円で毎月の試算表が翌月中に届くようになり、期の途中で今期の利益と税金の見込みを聞けるようになるなら、話は変わります。期末に慌てて設備を買って償却が1か月分しか取れなかった、消費税の額を納付書で初めて知った、というような損は、1件で12万円を超えます。

値上げの金額だけを見て判断すると、ここを見落とします。顧問料の見方そのものは顧問料が高い気がするの記事に、年1回の顧問で期中に決められなくなっていることは税理士が訪問に来ないの記事に書いています。

受け入れる前に確認する3つのこと

値上げを言われたら、その場で返事をせずに、次の3つを聞いてください。どれも聞いて失礼になる質問ではなく、税理士側も答えられて当然のことです。

値上げ後の料金に、何が含まれるのか

記帳は事務所がやるのか自社がやるのか、試算表は毎月か、決算料や年末調整、消費税の申告、税務調査の立会いは別料金か。これを書面で出してもらいます。口頭で「今までと同じです」と言われても、今までの契約に何が含まれていたかが曖昧なまま、ということが多いからです。ここで初めて、年1回しか会っていない理由が「そういう契約だったから」だと分かることもあります。

作業量が理由なら、自社の側で減らせるものはないか

値上げの理由が自社の作業量なら、作業を減らせば値上げ幅も変わります。領収書を月ごとに分けて渡す、通帳とクレジットカードの明細を会計ソフトに自動で取り込む設定にする、請求書を事務所と共有できる形で出す。これだけで事務所側の時間はかなり減ります。「資料の渡し方を変えれば据え置きにできるか」と聞くのは、まともな交渉です。

同じ料金で、他の事務所なら何が含まれるか

値上げ後の料金を持って、他の事務所の料金表と見比べます。料金表を公開している事務所なら、年商と作業内容で何が含まれていくらか、問い合わせなくても分かります。比べた結果、今の事務所の値上げ後の料金が妥当だと分かれば、安心して受け入れられます。逆に、同じ料金で月次の試算表と期中の相談が含まれる事務所があると分かれば、それは変える理由になります。値上げを機に相見積りを取るのは、どの業界でも普通の行動で、税理士に対してだけ遠慮する必要はありません。

値上げを機に変えるなら、急がずに決算後

確認した結果、変えると決めたとしても、値上げの通知を受けた月にすぐ解約するのは勧めません。期の途中で税理士が変わると、途中までの帳簿を次の事務所が引き継ぐ作業が発生し、その分の費用と時間がかかります。決算の直前に変えると、その期の決算を誰がやるのかで揉めます。

値上げは多くの場合「来期から」と告げられるので、今期の決算と申告は今の事務所にやってもらい、申告が終わった時点で次の事務所に移る、という流れが一番きれいです。それまでの間に相見積りを取り、次の事務所を決めておけば、決算が終わった翌月から新しい体制で始められます。時期の考え方は税理士を変えるタイミングの記事に書いています。

なお、値上げを断ったら「それなら顧問を続けられない」と言われることもあります。その場合も、申告が終わるまでは続けてもらえるかを先に確認してください。受け取っておくべき資料と、引き継ぎ先を指定されても断ってよい理由は顧問税理士から「廃業する」と言われたの記事の内容がそのまま使えます。

値上げを告げる側が、本来しておくべきこと

ここまでは顧問先の側の話でしたが、値上げを言う税理士の側にも、しておくべきことがあります。私も顧問料を上げる立場になることがあるので、自分の話として書きます。

値上げを告げるときは、理由を3つのどれかで説明する。値上げ後の料金に何が含まれるかを書面で出す。作業量が理由なら、顧問先の側で減らせる作業を先に提案して、据え置きの選択肢も示す。この3つをしないまま「人件費が上がったので」の一言で済ませるのは、値上げの額が妥当でも、顧問先からの信頼を減らします。

当事務所は料金表を公開していて、顧問料は年商と作業の範囲で決まります。会社が大きくなって年商の区分が変わるときは、決算の数字が出た時点で「次の期からこの区分になります」と先に説明し、作業の範囲を見直すことで据え置きにできるかも一緒に考えます。値上げを後から通知するのではなく、数字が変わった時点で話す、という順序です。

値上げを言われたことは、今の顧問が自社に何をしていて、それにいくら払っているのかを、初めて具体的に見る機会です。受け入れるにしても変えるにしても、そこを見てから決めてください。

値上げ後の料金と、当事務所の料金表を見比べてみませんか

年商と作業の範囲で料金が決まる料金表を公開しています。今の契約に何が含まれているかの整理から、引き継ぎまで当事務所が行います。決算が終わってからの移行で構いません。

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ミノラス会計事務所 公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太