顧問税理士から「廃業する」と言われた|次を決める前に受け取っておくものと、引き継ぎ先を指定されても断ってよい理由

「先生が来年で事務所を閉めると言うんです。開業からずっとお願いしていたので、次をどうすればいいのか」

群馬の税理士は高齢化が進んでいて、70代、80代で現役の先生が珍しくありません。その先生方が順に事務所を閉め始めていて、「廃業するので次を探してほしい」と言われる会社が、ここ数年で増えています。

不満があって変えるのとは違い、自分の意思ではない変更です。ただ、やることは同じで、しかも廃業には期限があるぶん、順番を間違えると取り返しがつかないものがあります。何を先に受け取るか、引き継ぎ先を指定されたらどうするか、いつ移るかを書きます。

廃業の伝えられ方は3つある

廃業の知らせ方には、だいたい三つのパターンがあります。

一つ目は、1年前に伝えられる場合です。「来年の決算を最後にします」と言われ、次の決算まで時間がある。一番余裕があり、この記事で書く順番をそのまま進められます。

二つ目は、引き継ぎ先とセットで伝えられる場合です。「廃業するが、知り合いの税理士に引き継ぐので、そのまま移ってほしい」と言われる。職員ごと別の事務所に移る形もあります。先生の側で段取りがついているので楽に見えますが、第四節で書くとおり、そのまま乗るかどうかは別の話です。

三つ目は、急な場合です。先生の病気や、ご家族からの連絡で、事務所がすでに動いていない。資料が事務所に残ったまま取り出せない、ということが実際に起きます。この場合は、受け取れるものを一日でも早く受け取ることが最優先です。

次を決める前に、先に受け取っておくもの

廃業の場合、次の税理士を決めるより先に、今の税理士から資料を受け取ってください。通常の変更なら新しい税理士が前の税理士に資料を請求できますが、廃業後は請求する相手がいなくなります。

・過去3期分以上の決算書と申告書の控え。法人税、消費税、地方税のすべて

・総勘定元帳。会計ソフトのデータがあればデータごと

・固定資産台帳。車両や機械の取得日と償却の履歴。これがないと翌期の減価償却が計算できません

・税務署・県・市に出した届出書の控え。青色申告の承認、消費税の各種届出、納期の特例、給与支払事務所の届出など

・給与関係。源泉徴収簿、年末調整の資料、給与支払報告書の控え

・過去に税務調査があれば、そのときの資料と結果

「次の税理士が決まったら渡します」と言われることがありますが、廃業が決まっているなら、先に受け取って構いません。これらは会社のものであって、税理士のものではありません。受け取る資料の詳しい内容は税理士変更の引き継ぎ資料の記事に書いています。

一番忘れられるのが、電子申告の情報

資料の中で、廃業のときに最も抜けやすく、抜けると一番困るのが、電子申告の情報です。

会社の申告を電子で出すとき、会社には国税用と地方税用の利用者番号と暗証番号があります。これを取得して管理しているのは、たいてい税理士です。社長が自分の会社の番号を知らない、というのは普通のことです。

税理士が廃業して連絡が取れなくなると、この番号が分からなくなります。番号が分からなくても再発行や再取得はできますが、税務署での手続きや郵送のやり取りが要り、時間がかかります。申告期限の直前にこれをやるのは避けたい。

廃業を告げられたら、「国税と地方税の電子申告の利用者番号と暗証番号を書面でください」と伝えてください。社長の側で「そういうものがあるらしい」と知っているだけで、この問題は起きません。

引き継ぎ先を指定されても、断ってよい

「知り合いの税理士に引き継ぐので、そのまま移ってほしい」と言われたとき、そのまま移る義務はありません。顧問契約は会社と税理士の間のもので、税理士が別の税理士に顧問先を譲る、という形は、会社の同意があって初めて成り立ちます。

指定された先が良い事務所なら、そのまま移って問題ありません。長年の付き合いの先生が選んだ相手なので、変な事務所ではないことが多いです。ただ、「先生が選んだから」で決めるのではなく、一度その事務所と会って、自分の会社に合うかを見てから決めてください。先生の知り合いであることと、自分の会社に合うことは、別の話です。

見るのは三つです。担当者が誰になり、その人と話が合うか。月次の試算表がいつ届き、期中に相談できる形か。料金が今と比べてどうか。指定された事務所と、自分で探した事務所を一つ並べて比べれば、判断はつきます。

断る場合も、先生との関係を壊す必要はありません。「ご紹介ありがとうございます。別の事務所も含めて自分で決めます」で十分です。廃業する側は、顧問先が困らないことを願っているのであって、特定の事務所に行くことを望んでいるわけではありません。伝え方は税理士の断り方の記事に書いています。

期中でも移れる|決算をまたぐときの考え方

通常の変更なら、決算と申告が終わったあとに移るのが一番きれいです。廃業の場合は、廃業の日が先に決まっているので、決算の時期と合わないことがあります。

期中でも移れます。前の税理士が期の途中まで月次を入れていて、新しい税理士がそこから引き継いで決算まで組む、という形は普通にあります。引き継ぎの時点の試算表と元帳があれば、新しい側はそこから続きを入力できます。期首から全部やり直す必要はありません。

注意が要るのは、廃業の日と申告期限の関係です。「決算は組むが申告は次の税理士で」という半端な形は避けてください。前の税理士が最後の決算と申告まで出してから廃業するのか、決算を待たずに廃業して新しい税理士が決算から組むのか、どちらかにはっきり決める。間に空白があると、申告期限を過ぎるリスクが出ます。変えるタイミングの一般論は税理士を変えるタイミングの記事に書いています。

次の税理士は、同じ基準で選ばない

廃業で税理士を変える会社の多くは、前の先生と20年、30年の付き合いです。開業のときに紹介されて、そのまま。先生の年齢も事務所の規模も、選んだのではなく、たまたまそうだった、という方が多いと思います。

次を選ぶときは、今回のことを基準に入れてください。一つは、事務所の年齢構成です。先生が一人で、70代で、後継者がいない事務所に移れば、10年後に同じことが起きます。代表の年齢と、若い有資格者がいるかどうかは、聞いてよいことです。

もう一つは、「担当者が辞めても、事務所として続くか」です。一人の先生と一対一の関係は、先生に何かあれば止まります。複数の人間が会社の数字を見ている事務所なら、担当が変わっても続きます。前の先生との関係が深かった方ほど、次は一対一ではなく、事務所として付き合える相手を選んだほうがよいと思います。

「税理士を変えると税務署に目をつけられる」という話を気にされる方もいますが、廃業による変更はもちろん、通常の変更でも、それが調査の理由になることはありません。この点は税理士を変えると税務調査が来る、は本当かの記事に書きました。

廃業で税理士を探している方は、資料の受け取りからお手伝いします

受け取るべき資料の一覧をお渡しし、電子申告の情報の確認、期中からの引き継ぎまで対応します。前の先生とのやり取りが必要な場合は当事務所が行います。群馬県内の税理士廃業にともなう引き継ぎは、これまでも受けています。

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ミノラス会計事務所 公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太