顧問税理士の顧問料は高いのか|月額に何が含まれているかで判断する

「うちの顧問料、高くないですか。月4万円払って、年に1回しか来ないんです」

屋根と防水の工事をしている会社の社長から、そう相談を受けたことがあります。同じ質問は本当によく受けます。そして、答えは「金額だけでは判断できません」です。

顧問料は、含まれている作業の量で決まります。記帳を全部やっているのか、資料を受け取るだけなのか。給与計算まで見ているのか。月次で訪問しているのか、年に一度なのか。同じ月4万円でも、中身は会社ごとにまるで違います。

だから「高いか安いか」を考える前に、その4万円が何の対価なのかを分解する必要があります。公認会計士・税理士の長島祐太が、相場と、分解のしかたと、実際に比べてみたら逆転した例を書きます。

だいたいの相場

中小企業の法人で、月額1万円から5万円というのが広い意味での相場です。幅がありすぎて参考になりませんが、実際に幅があります。金額を動かしているのは主に次の4つです。

・記帳を事務所がやるか、会社がやるか

・訪問の頻度(毎月、四半期、年1回)

・給与計算や年末調整を含むか

・売上規模と取引の件数

このうち影響が大きいのは記帳です。仕訳の入力を事務所がやるかどうかで、月額は倍近く変わります。「記帳代行込みで月3万円」と「自社入力で月3万円」は、同じ金額でもまったく別の契約です。

決算料は別建てが一般的で、月額の4か月分から6か月分くらいが目安になります。月3万円なら決算料が12万円から18万円。年間では48万円から54万円という計算です。

月額に決算料を含めて均した料金体系の事務所もあります。この場合、期の途中で解約すると決算をしていないのに決算料相当を払っている状態になるので、契約書でどちらの形か確認しておいてください。

「高い」と感じる3つのパターン

金額そのものより、納得感のなさが不満になっている場合がほとんどです。よく聞くのは次の3つです。

ひとつめは、何をしてもらっているか分からない。請求書に「顧問料」としか書かれていない。月額に何が含まれているかの一覧を、契約時に一度も見せられていない。これがいちばん多いです。

ふたつめは、会う回数と金額が合っていない。年に一度、決算のときだけ資料を渡して決算書が返ってくる。それで月4万円なら、社長が高いと感じるのは当然です。

みっつめは、自社でやっている作業の分まで払っている。会計ソフトに自分たちで入力しているのに、記帳代行込みの料金のまま何年も来ている。取引量が減ったのに金額が据え置きというケースも同じです。

時間単価に直してみる

感覚で判断せず、一度割り算してみることをおすすめします。

月3万円、決算料18万円の会社なら年間54万円です。これに対して、事務所側がかけている時間はどのくらいか。記帳代行がなく、年に一度の訪問と決算だけなら、決算と申告に20時間、期中の資料確認と問い合わせ対応に12時間、合わせて30時間程度でしょう。54万円を30時間で割ると、時間単価は1万8,000円です。

同じ54万円でも、毎月訪問して月次の説明をしている事務所なら、訪問と資料作成で年36時間、決算に20時間、問い合わせ対応を含めて年60時間を超えます。時間単価は9,000円を切ります。

金額は同じでも、単価は倍違うわけです。「高い」と感じているとき、実際に高いのは金額ではなく単価であることが多いです。

見積もりを比べたら逆転した話

冒頭の会社の話です。社員7名、売上1億2,000万円。顧問料は月4万円、決算料25万円で、年間73万円でした。

社長が他所から取った見積もりは、月2万5,000円、決算料15万円。年間45万円です。28万円安い。これだけ見れば移る理由になります。

そこで、いまの契約に何が含まれているかを確認してもらいました。分かったのは2つです。記帳は全部その事務所がやっていました。領収書と請求書を月末にまとめて送り、仕訳は向こうで切っている。それから、7名分の給与計算と社会保険の手続き、年末調整も含まれていました。

新しい見積もりのほうは、記帳は自社入力が前提で、給与計算は月8,000円の別料金でした。給与計算を足すと年9万6,000円が乗って、54万6,000円になります。

さらに、自社で記帳するとなると誰かがやることになります。この会社の取引量だと、週4時間くらいは見ておく必要がありました。パートの時給1,150円で計算すると、年間で約24万円です。

合計すると78万円を超えます。いまの73万円より高い。安く見えた見積もりのほうが、実際には高かったということです。

この社長の不満は、金額ではなく年1回しか来ないことでした。そこを混同して料金の話にしてしまうと、比較を間違えます。

値下げを頼む前に考えること

顧問料を下げてもらう交渉自体は、悪いことではありません。ただ、下がった分だけ関与は薄くなると思ってください。事務所側は、下げた顧客にかける時間を減らします。それが自然です。

だから、いま不満なのが「何もしてくれないこと」なら、値下げは逆方向です。同じ金額のまま、やってもらう内容を増やす交渉のほうが筋が通っています。「料金はこのままで構わないので、四半期に一度は数字の説明をしてください」という頼み方です。

逆に、自社で記帳できるようになった、取引が減った、給与計算を社労士に移した、という事情があるなら、値下げを求めるのは正当です。契約時から状況が変わっているのに料金が据え置きなら、そこは言っていいと思います。

内訳を出せない事務所が問題

結局のところ、料金が高いか安いかは、内訳が出てこないと判断できません。そして、内訳を求めて出てこない事務所は、その時点で問題があります。

聞くのは簡単です。「月額に何が含まれているか、一覧でいただけますか」。これに答えられない、あるいは嫌な顔をされるなら、金額の問題ではありません。

出てきた一覧を見て、自社がやっている作業が含まれていたら削ってもらう。含まれていない作業を頼みたければ足してもらう。そのうえで金額を比べれば、判断できます。

それでも納得できず契約を見直すことにしたなら、伝え方は今の税理士への断り方|角を立てずに契約を終える手順と文例に文例を載せています。料金への不満は理由として伝えなくて構いません。

なお、月額の対価として本来含まれているべきものの筆頭が、決算書の説明です。ここが抜けたまま何年も続いている会社は多いです。何を失っているかは決算書の説明がない|数字を渡されるだけの顧問契約で失っているものに書きました。

いまの顧問料が内容に見合っているか知りたい方へ

ミノラス会計事務所では、いまの契約内容と請求書を見せていただいて、含まれている作業を一覧に分解したうえで、当事務所ならいくらになるかをお出ししています。移らない場合でも構いません。比べる材料としてお使いください。

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公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太