税理士が訪問に来ない|年に1回しか会わない顧問で、期の途中に決められなくなっているもの

「税理士に会うのは、決算のときに1回。あとは資料を送って、申告書が返ってくるだけ」

この状態で何年も続いている会社は多いです。料金は安いし、申告は毎年きちんと出てくる。不満らしい不満はないけれど、同業の集まりで「うちは毎月来る」と聞いて、自分のところはそれでいいのか、と検索した。そういう方に向けて書きます。

先に結論を書くと、訪問の回数そのものは問題ではありません。毎月来ても雑談して帰る税理士もいますし、来なくても電話1本で期中の相談ができる関係もあります。問題は、期の途中で決めるべきことが、誰にも相談されないまま期末を迎えることです。年1回の顧問で典型的に抜けているものを、3つ書きます。

年1回の顧問で起きていること

年に1回、決算のときだけ税理士と会う契約では、税理士の仕事は「終わった期の数字を申告書にまとめること」になります。期の途中で何が起きているかは、資料を受け取る決算後に初めて知ります。知ったときには、もう期は閉じています。

税金の計算で意味のある判断の多くは、期の途中にしかできません。設備をいつ買うか、報酬をいくらにするか、納税資金をいつまでに準備するか、借入をいつ申し込むか。これらは期末を過ぎてからでは、どれも動かせません。年1回の顧問は、申告は正確でも、この判断の部分が丸ごと抜けている状態です。

1つ目:期末に買った設備は、1か月分しか経費にならない

利益が出そうな期の決算月に、設備を買う。期末までに買えば経費になる、と思って急ぐ。年1回の顧問の会社で、一番よく見るパターンです。

機械や車両の購入代金は、買った期に全額が経費になるわけではありません。何年かに分けて少しずつ経費にする仕組みで、しかも買った月からの月割りです。たとえば450万円の機械を7年で償却する場合、期の最初の月に買っていれば、その期の経費は概算で約129万円。決算月に買うと、1か月分の約11万円です。差は約118万円、税金にして30万円近い違いが、買う月を変えるだけで出ます。

期中に一度でも「今期は利益が出そうです。設備の予定はありますか」という会話があれば、買う時期を前にずらすか、翌期の期首に回すかを選べます。年1回の顧問では、この会話が起きる場がありません。税理士が知るのは、決算資料の中に領収書が入っていたときです。

2つ目:消費税の額を、納付書が届いてから知る

消費税は、売上に含まれる消費税から、仕入や経費に含まれる消費税を引いた残りを納める仕組みです。人件費には消費税が含まれないので、人件費の比率が高い業種ほど納める額が大きくなります。サービス業や人を多く使う業種では、年商1億円前後で年間の消費税が数百万円になることは珍しくありません。

年1回の顧問の会社では、この額を申告書ができたときに初めて知る、ということが起きます。決算から2か月後に数百万円を一度に納める。足りない年は、短期の借入でつなぐ。前年の額を基に前払いする仕組みはあるので、まったく一度ではないのですが、期末の時点で「今期はいくらになりそうか」を知らされていないと、資金の準備ができません。

消費税は、期中の売上と経費が分かれば、かなり正確に見込めます。半年の時点で「今期はこのくらい。月にこれだけ分けておいてください」と言うだけで、つなぎの借入は要らなくなります。これも年1回の顧問では起きない会話です。

3つ目:融資の相談相手と、期中の数字がない

出店や設備投資で銀行に融資を申し込むと、「事業計画と直近の試算表を」と言われます。年1回の顧問では、期中の試算表は作られていません。決算書は3期分あっても、直近の期の途中の数字がない。そこで初めて、税理士に頼んで数か月分の試算表を急いで作ってもらい、事業計画は社長が自分で書く、という流れになります。

融資は通ることが多いですが、申込みから実行まで数か月かかり、出店や投資の時期が後ろにずれます。期中の試算表が毎月あって、出店の話を税理士が先に聞いていれば、計画書も含めて1か月で出せる案件です。群馬銀行でも東和銀行でも、しののめ信用金庫でも、求められる資料は同じで、違うのは手元にあるかどうかだけです。

融資の相談は、必要になったときに急に始まります。そのときに「今の数字」と「相談相手」の両方がないと、動き出しが遅れます。訪問の有無より、期中の数字が手元にあるかどうかの問題です。

訪問の回数ではなく、期中に決められるかで見る

いまの顧問を見直すかどうかの判断は、「毎月来るか」ではなく、次の3つで見てください。

・期の途中で、今期の利益と税金の見込みを聞いたことがあるか

・設備投資や借入を、実行する前に税理士に相談する流れになっているか

・月次の試算表が、翌月中に手元に届いているか

3つとも「ない」なら、訪問が毎月あっても年1回でも同じです。期中に決めるべきことが決まらない構造になっています。逆に、訪問はなくても3つが揃っていれば、見直す必要はあまりありません。

すぐに変える前に、一度だけ試せることがあります。期の半ばに、今の税理士に「今期の利益と税金の見込みを教えてほしい」と聞いてみることです。試算表が月次で作られていれば、数日で概算が返ってきます。「決算が終わらないと分からない」という返事なら、期中の数字が存在していないということで、上の3つは揃いません。この一回の質問で、見直すべきかどうかはほぼ分かります。

「同業は毎月来る」という訪問の回数が引っかかりの入口になることは多いのですが、本当に失っているのは、上の3つです。来てほしいのではなく、先に言ってほしい。質問への返事が遅いという別の形で同じことが起きているケースは、税理士から連絡が来ない・返事が遅いの記事に書いています。

安い顧問料が安いとは限らない

年1回の申告だけなら、月2万円前後の顧問料は妥当な金額です。ただ、上の3つで失うものを並べると、設備の償却で30万円前後の税金、消費税のつなぎ借入の利息、投資が半年遅れた分の売上です。顧問料の差額で埋まる金額ではありません。

顧問料が高いか安いかは、金額だけでは決まりません。期中に何が起きるかを知っていて、先に言ってくれる相手に払うお金と、終わった期をまとめるだけの相手に払うお金は、同じ「顧問料」でも中身が違います。顧問料の見方は顧問料が高い気がするの記事に、変えるなら決算後のどの時期がよいかは税理士を変えるタイミングの記事に書いています。

当事務所は、訪問の回数を売りにはしていません。月次の数字を一緒に見る時間を期首に決めて、設備・報酬・納税資金・借入の判断を、実行する前に話す。それを担当者が続ける、という形です。高崎の事務所に来ていただいても、オンラインでも構いません。

期の途中で、先に言う顧問に変えませんか

今期の利益と税金の見込み、設備投資の時期、消費税の納税資金を、期中に数字で共有します。今の税理士からの引き継ぎは当事務所が行います。

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ミノラス会計事務所 公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太