税理士と会計ソフトを一緒に変えたい|順番は税理士が先、切り替えは期首、移すものは4つだけ

「税理士を変えるなら、この機会に会計ソフトも変えたい。でも、両方いっぺんに変えて大丈夫なのか」

大丈夫です。むしろ、税理士を変えるタイミングは、会計ソフトを変えられるほぼ唯一の機会です。税理士を変えずにソフトだけ変えようとすると、今の税理士がそのソフトを使えない、データの受け渡し方が変わる、という理由で話が進みません。逆に税理士を変えるときは、どのみち帳簿の引き継ぎが発生するので、そこにソフトの切り替えを重ねても手間はほとんど増えません。

ただし、順番と時期を間違えると、二度手間になります。順番は税理士が先、切り替えは期首、移すものは4つだけ。この3つを押さえれば、2つの変更は1つの作業で済みます。

なぜ税理士の変更と会計ソフトの変更は一緒に来るのか

会計ソフトは、多くの会社で税理士が決めています。顧問契約を結んだときに「うちはこのソフトなので」と指定され、そのまま使っている。あるいは自社では何も入力しておらず、事務所の中にあるソフトで事務所が帳簿を作っていて、自社の手元には決算書しかない。どちらの場合も、会計ソフトは実質的に税理士のものです。

だから、税理士を変えようとすると、会計ソフトの問題が必ず出てきます。今のソフトのデータは事務所にあって自社では開けない、次の税理士はそのソフトを使っていない、自社で使っているソフトが古くて通帳の自動連携ができない。税理士を変える話をしていたはずが、気づくとソフトの話になっている、というのはこのためです。

逆に言えば、会計ソフトを自社で選び直し、データを自社の手元に置くことは、税理士を変えて初めてできることです。次に税理士を変えるときに同じ問題を繰り返さないためにも、このタイミングでソフトを自社のものにしておく価値があります。

順番は、税理士を先に決めてからソフト

先にソフトを決めて、それが使える税理士を探す、という順番は勧めません。会計ソフトは税理士と一緒に使うもので、事務所が日常的に使っているソフトでないと、試算表の確認も決算の作業も遅くなります。ソフトを先に決めると、税理士の選択肢がそのソフトを使う事務所だけに狭まります。

税理士を先に決めて、その事務所が標準で使っているソフトに合わせる。これが一番早く、一番トラブルが少ない順番です。いまの主要なクラウド会計ソフトは、どれも通帳やクレジットカードの明細を自動で取り込めて、自社でも税理士でも同じ画面を見られます。ソフトごとの違いより、その事務所がそのソフトをどれだけ使い慣れているかのほうが、実際の作業の速さに効きます。

税理士を選ぶ段階で聞いておくことは2つです。標準で使っているソフトは何か、そして今のソフトからの移行作業を誰がやるのか。移行を自社でやってくださいという事務所と、事務所側で引き受ける事務所があります。ここは料金にも関わるので、契約前に確認してください。

切り替えは期首。期の途中で変えると何が起きるか

会計ソフトの切り替えは、期首の1日からが原則です。期の途中で変えると、その期の帳簿が2つのソフトに分かれ、決算のときに合算する作業が発生します。合算できないわけではありませんが、途中までの仕訳を新しいソフトに入れ直すか、2つのソフトの試算表を手で足すかのどちらかで、どちらも手間と間違いの元です。

たとえば3月決算の会社なら、4月1日から新しいソフトで帳簿を始めます。前期(3月期)の決算と申告は今の税理士に最後までやってもらい、申告が終わった5月末ごろに、確定した前期末の残高を新しいソフトの開始残高として入れます。4月と5月の取引は、開始残高が入る前から新しいソフトに入れておいて構いません。残高は後から入れても帳簿はつながります。

つまり、税理士の変更を決めてから実際に新しい体制で動き出すまでに、期末から申告までの2〜3か月の重なりがあります。この間に新しい税理士と契約を結び、ソフトの設定を済ませ、期首から新しいソフトで入力を始める。前の税理士には申告まで、という区切りです。税理士を変える時期の考え方は税理士を変えるタイミングの記事に書いています。

移すものは4つ、移さなくていいものは過去の仕訳

ソフトを変えると聞くと、過去の帳簿を全部新しいソフトに移さないといけない、と思う方が多いのですが、そうではありません。新しいソフトに入れるのは、次の4つだけです。

・前期末の残高(確定した決算書の貸借対照表の数字)

・固定資産台帳(建物、車、機械などの取得日・取得価額・これまでの償却額)

・取引先と預金口座の一覧(自動連携の設定に使う)

・消費税の計算方式(原則か簡易か、インボイスの登録番号)

過去の仕訳は移しません。過去の期の帳簿は、前の税理士のソフトで完結していて、決算書と申告書という形で手元に残っていれば十分です。税務調査で過去の帳簿を求められたときは、前の税理士から受け取った総勘定元帳の印刷かデータを出せばよく、新しいソフトの中にある必要はありません。

4つのうち一番見落とされるのが固定資産台帳です。前期末の残高には固定資産の帳簿価額は載っていますが、1つ1つの資産の取得日や償却の経過は載っていません。これがないと、新しいソフトで今期の減価償却が計算できません。前の税理士から受け取るべき資料は、顧問税理士から「廃業する」と言われたの記事に6点として書いていて、廃業でなく変更の場合もそのまま使えます。

ソフトを変えると、自社の経理で何が変わるか

古いソフトや事務所専用のソフトからクラウド会計に変えると、自社の経理で変わることが3つあります。

1つ目は、入力の作業が減ることです。通帳とクレジットカードの明細が自動で取り込まれるので、手で打つのは現金の取引と、取り込んだ明細に科目を付ける作業だけになります。請求書や領収書の画像を読んで仕訳の候補を出す機能もあるので、紙を1枚ずつ見て打ち込む作業はほぼなくなります。

2つ目は、試算表を自分で見られることです。税理士が作って送ってくるのを待つのではなく、入力が済んだ時点で、今月の売上と利益、預金の残高が画面に出ます。期の途中で税理士に「今期はどのくらい利益が出そうか」と聞く前提ができます。

3つ目は、記帳を自社でやるか事務所に出すかを、選べるようになることです。クラウド会計は自社と事務所が同じデータを見るので、「明細の取り込みと科目付けは自社、月末の確認と修正は事務所」というような分け方ができます。経理担当が1人しかいない会社なら、担当者が辞めたときに事務所側で引き取れる形にしておくのが安全です。社内に残す仕事と外に出す仕事の分け方は経理担当が1人しかいない会社で起きていることの記事に書いています。

新しい税理士が、引き継ぎで確認すべき場面

税理士とソフトを同時に変える引き継ぎで、問題が起きるのはほぼ決まった場面です。新しい税理士の側が、次の4つを確認していれば、まず止まりません。

・前期の申告書と決算書が確定してから開始残高を入れているか。申告前の数字で入れると、後で直すことになる

・固定資産台帳を1件ずつ受け取っているか。合計額だけで引き継ぐと、個別の資産を売却・除却したときに困る

・消費税の方式と届出の状況を前の税理士に確認しているか。簡易課税の選択や取りやめの届出は、出した時期で効き方が変わる

・前のソフトの解約を、前期の申告が終わり、データを受け取った後にしているか。先に解約すると、データが見られなくなることがある

当事務所は、クラウド会計ソフトを標準にしていて、今のソフトからの移行作業は当事務所が行います。開始残高と固定資産台帳の入力、自動連携の設定、消費税の設定まで含みます。記帳を自社でやるか当事務所に出すかは、経理の人員と社長の時間で決めればよく、途中で切り替えることもできます。

税理士を変えるときにソフトも変える、というのは、作業が2倍になる話ではなく、1回の引き継ぎで自社の経理の形を決め直す機会です。次に税理士を変えることがあっても、ソフトとデータは自社の手元に残ります。

税理士とソフトの切り替えを、1回の引き継ぎで済ませませんか

今のソフトからの移行は当事務所が行います。記帳を自社でやるか当事務所に出すかも、ご相談のうえで決められます。前の税理士の申告が終わってからの切り替えで構いません。

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ミノラス会計事務所 公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太