一人親方の法人成り|元請に期限を切られてから決める6つのこと【群馬・高崎】

「社会保険に入っていない一人親方は、来月から現場に入れないと言われました」

高崎市内で足場工事をされている方から相談を受けたときの一言です。一人親方として7年。元請から通告されて、その週のうちに来られました。

法人成りの相談で来られる現場系の方は、ほとんどがこの形です。税金を減らしたいから、ではありません。仕事を続けられなくなるから来る。

この記事では、一人親方が法人成りするときに実際にかかるコストと、判断すべき順番を書きます。損得だけの話ではないので、数字を先に出します。

現場系の法人成りは、税金の話から始まらない

建設業では、元請が下請の社会保険加入状況を確認する運用が広がっています。加入していない事業者を現場に入れない。大きな元請ほど徹底しています。

個人事業のままでも国民健康保険と国民年金に入っていれば形式は整いますが、常用に近い働き方をしている一人親方は、そもそも労働者ではないのかという整理が持ち上がる。法人にして自分を役員にし、厚生年金と健康保険に入る。これがいちばん話が早いので、結果として法人成りに向かいます。

もうひとつはインボイスです。免税事業者のままだと元請の側で消費税の負担が増えるため、取引を続けにくくなる。登録して課税事業者になるなら、法人成りのタイミングと合わせて考えたほうがいい。

3つ目が与信です。法人でないと取引口座を開かない元請があります。単価の交渉以前に、土俵に上がれるかどうかの問題になる。

つまり現場系の法人成りは、得か損かではなく、続けられるかどうかで決まります。そのうえで、かかるコストを正確に知っておく必要があります。

社会保険は年間いくら増えるのか

法人になると社会保険は強制加入です。役員が自分ひとりでも入ります。ここがいちばん大きい変化なので、先に数字を置きます。

役員報酬を月50万円にした場合の概算です。料率は毎年改定されるので、目安として見てください。

厚生年金 月9万1,500円(会社と本人で半分ずつ)

健康保険 月4万9,000円ほど(同じく半分ずつ)

子ども・子育て拠出金 月1,800円(全額が会社負担)

会社が負担するのが月7万2,000円ほど、本人の給与から引かれるのが月7万円ほど。合わせて年間約170万円です。

個人事業のときに国民健康保険と国民年金で年120万円ほど払っていたとすると、増える分は年50万円前後になります。40歳以上なら介護保険料が上乗せされるので、もう少し増えます。

ただ、これは単純な負担増ではありません。厚生年金は将来受け取る年金額に反映されます。健康保険には傷病手当金があるので、けがで現場に出られない期間の補償が付く。現場仕事にとって、この差は小さくないと思っています。

それでも、法人税と所得税の差だけを見て法人成りを勧める話には注意してください。社会保険を入れて計算し直すと、有利になる利益水準は思っているより高いところにあります。この計算そのものは会社設立の流れと必要書類で扱った範囲を超えるので、別に整理します。

建設業許可を取るつもりなら、資本金は500万円から考える

1件500万円未満の工事だけなら、建設業許可はなくても請け負えます。多くの一人親方はこの範囲で仕事をしています。

ただ、法人成りをきっかけに元請から直接仕事を受けるようになると、金額が上がって許可が必要になる場面が出てきます。許可を取る場合、財産的基礎として自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力が求められます。

ここで効いてくるのが資本金の額です。設立時に資本金を500万円にしておけば、この要件は最初からクリアできる。あとから増資することもできますが、手続きと登録免許税がかかります。

一方で、資本金を大きくすれば手元の現金がそのぶん会社に固定されます。設立時の登録免許税も資本金に連動します。許可を取る予定がないなら、無理に500万円にする必要はありません。資本金はいくらにすべきかに判断の材料を書きました。

足場工事の方の場合は、2年以内に許可を取る前提があったので資本金500万円で設立しています。事業目的にも、いま受注していない工事の種類を先に入れました。

職人を雇うのか、外注のままにするのか

法人成りと同時に、応援に来てもらっていた職人を社員にするかどうかを決めることになります。

外注のままなら社会保険料の会社負担は増えません。ただし、実態が外注ではなく雇用だと判断されれば、あとから給与として課税されます。税務調査で必ず見られる論点です。

請求書が出ているか

支払いが毎月同じ日に同じ金額になっていないか

道具や材料を誰が用意しているか

仕事を断る自由があるか、他の現場に行けるか

このあたりが判断材料になります。詳しくは税務調査はいつ来るのかに書きましたが、現場系で指摘を受けるのはほぼここです。

それと、個人事業のときに使っていた工具や車両を法人にどう移すか。名義をそのままにして会社が使っている状態は、あとで整理が面倒になります。譲渡するのか賃貸するのか、金額をいくらにするのかを設立時に決めておいてください。

法人成り直後がいちばん資金繰りが苦しい

見落とされやすいのがここです。売上が変わらなくても、法人成りした直後は現金が減ります。

理由は3つあります。社会保険料の会社負担が新しく発生すること。役員報酬から源泉所得税と社会保険料を天引きして納める事務が増えること。そして、個人時代の売掛金が個人に入り、法人の売上が立つのは1か月から2か月先になることです。

建設業は特に、入金より先に支払いが出ます。材料費と外注費は現場が終われば請求が来ますが、元請からの入金は月末締めの翌々月払いということも珍しくない。この間の資金を法人が自前で持っていないと、初月から回りません。

足場工事の方は、法人成りと同時に運転資金を借りています。設備投資ではないので使途は運転資金です。ここを設備資金と混ぜて申し込むと通りにくくなるので、運転資金と設備資金の違いを確認しておいてください。

法人成りの場合、個人事業の実績があるぶん創業融資より説明しやすい面があります。確定申告書を2期分出せば、売上の推移も利益率も見えるからです。何を求められるかは創業融資の必要書類一覧にまとめました。借入先の選び方は創業融資はどこで借りるべきかにあります。

決める順番

相談を受けたときに、この順番で詰めています。

1 いつまでに法人でなければならないのか。元請の期限を確認する

2 建設業許可を取る予定があるか。あるなら資本金を500万円に置く

3 役員報酬をいくらにするか。社会保険料と手取りの両方から逆算する

4 職人を社員にするか外注にするか。実態から決める

5 工具と車両の引継ぎ方を決める

6 法人成り直後の運転資金を確保する

元請から通告を受けてから動くと、この6つを2週間で決めることになります。足場工事の方はそれで間に合いましたが、資本金の額と役員報酬をもう少し落ち着いて決められたはずだと今でも思っています。

設立後の届出も忘れないでください。青色申告の承認申請書を出し損ねると1期目の赤字を繰り越せません。会社設立後の届出一覧に提出先ごとに整理してあります。

高崎で法人成りをお考えの一人親方の方へ

元請から期限を切られている場合でも対応します。資本金の額、役員報酬、外注と雇用の整理、法人成り直後の運転資金まで含めて一緒に決めます。会社設立の手数料はいただいていません。

会社設立サポートについて

創業融資サポートについて

代表ごあいさつ

ミノラス会計事務所

TEL 027-386-2807(平日9:00〜18:00)

群馬県高崎市江木町610-10 ミノラスビル3階

公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太