「資本金って、いくらにすればいいんですか」
会社設立の相談で、ほぼ必ず聞かれます。私の答えは決まっています。迷うなら100万〜300万円。ただし、理由を持って決めること。
1円でも会社は作れます。作れますが、1円にしてはいけない理由が、実務にはいくつもあります。
目次
資本金1円の会社に、銀行口座が作れないことがある
2006年の会社法改正で最低資本金制度が撤廃されて以来、資本金1円の株式会社は合法です。合法であることと、事業が回ることは別です。
まず法人口座。設立直後の口座開設は、マネーロンダリング対策で審査が年々厳しくなっています。資本金1円、事業実態の説明があいまい、バーチャルオフィス。この3つが揃うと、まず通りません。
私が高崎で勧めている順番はこうです。設立したら、まずGMOあおぞらネット銀行か住信SBIネット銀行で口座を作る。この2行は設立直後でも比較的通ります。そこで入出金を回して事業実態を作ってから、群馬銀行、東和銀行、しののめ信用金庫、ぐんまみらい信用組合へ。地元金融機関の審査も、動いている通帳を持って行くほうが明らかに通りやすい。
私は両方の口座を作りました。求められたのは、本人確認資料などのほかに、事業で使う請求書です。つまり「本当に事業をしているのか」を見られます。会社を作っただけで、動いている取引が何もない状態だと、そこで止まる可能性がある。設立前から仕事の話を進めておくことが、口座開設の準備にもなります。
この2行を勧めるのには、もうひとつ理由があります。日本政策金融公庫は銀行ではないので、融資を受けても公庫に口座はできません。返済は民間口座からの引き落としです。ネット銀行はこの返済口座に指定できないことが多い。GMOあおぞらと住信SBIは、どちらも指定できます。創業融資まで見据えるなら、無駄がありません。
メガバンクは選択肢に入れなくて構いません。都内の解説記事には「メガバンクは審査が厳しい」と書いてありますが、そもそも群馬で創業したばかりの会社がメガバンクに口座を作ることは、まずない。融資も日々の付き合いも、相手は地元です。
ただし、この順番で進めても資本金1円なら話は変わります。「この人は本気で事業をする気があるのか」。そう見られます。
取引先も同じです。登記事項証明書は誰でも取れます。法人相手の商売を始めれば、取引開始前に先方の管理部門があなたの会社の登記を取り、資本金を見る。1円と書いてあれば、与信の稟議は通りにくい。資本金は、会社が対外的に見せる最初の数字です。
多すぎても損をする。1,000万円の壁
境目は1,000万円です。
資本金が1,000万円未満なら、設立から最大2期、消費税の納税義務が原則免除されます(特定期間の売上等により2期目から課税となる場合があります)。1,000万円以上で設立すると、この免税期間が初年度から消えます。インボイス登録を最初からするかどうかで重みは変わりますが、免税を選べる立場を、自分から捨てる必要はありません。
住民税の均等割も変わります。資本金1,000万円以下・従業員50人以下なら、群馬県と高崎市を合わせて年額およそ7万円。1,000万円超で倍近くに跳ねます。利益が出ていなくても、毎年かかる固定費です。
登録免許税も資本金に連動します。株式会社の設立登記は「資本金×0.7%、最低15万円」。資本金2,142万円あたりまでは最低額の15万円で収まりますが、それを超えると登記の時点で税金が増え始めます。
もっと手前で効くのが、定款認証の手数料です。令和4年1月から、資本金で3段階に分かれました。
100万円未満:3万円
100万円以上300万円未満:4万円
300万円以上:5万円
私が勧める100万〜300万円の帯なら、4万円です。
ここに落とし穴があります。定款に「成立後の資本金の額」または「設立に際して出資される財産の価額」を書いていないと、資本金がいくらであっても一律5万円になります。100万円で設立したつもりが、書き漏らしたせいで2万円多く払う。専門家に頼めばまず起きませんが、自分で定款を作るなら気をつけてください。
決め方は、この3つで足ります
初期費用+運転資金3〜6ヶ月分
資本金の本来の意味は「事業の元手」です。事務所の敷金、パソコン、仕入れ。そして売上が立つまでの数ヶ月分の家賃と生活費。積み上げると、多くの業種で100万〜300万円に落ち着きます。
実る前に枯らさないための、水の量です。
創業融資を受けるなら、自己資金の見せ方
日本政策金融公庫高崎支店で創業融資を申し込むと、通帳の履歴でお金の出どころを確認されます。コツコツ貯めた自己資金を資本金として会社に入れてあれば、「この人は準備してきた」という何よりの証拠になります。
直前に親族から振り込まれた「見せ金」は、履歴で分かります。逆効果です。
融資希望額に対して自己資金が3分の1程度あると、面談の空気が変わります。
許認可が必要な業種は、要件が先
建設業許可(一般)なら自己資本500万円以上。有料職業紹介なら基準資産500万円以上。労働者派遣なら2,000万円以上。許認可ビジネスは、資本金を自由に決められません。
これを知らずに100万円で設立し、許可申請の段階で増資(登録免許税が最低3万円。また前橋地方法務局高崎支局へ登記です)になるケースを、実際に見ています。設立前に、自分の業種の要件を確認してください。
資本金についての誤解
「資本金は使ってはいけないお金」だと思っている方がいます。違います。資本金は会社の口座に入れた瞬間から、家賃にも仕入れにも自由に使えます。金庫に封印しておくお金ではありません。
「あとから変えられないのでは」という心配も聞きます。増資も減資もできます。ただし、どちらも登記が必要で、費用と手間がかかる。最初に理由を持って決めておくのが、いちばん安い。
群馬・高崎で会社設立をお考えの方へ
資本金をいくらにするかは、創業融資の計画とセットで決めるのが本来の順番です。金額だけを先に決めて、後から融資を考えると、たいてい辻褄が合わなくなります。
当事務所では、会社設立の手数料をいただいていません(顧問契約をご締結いただく場合)。法定費用の実費だけで、定款の作成から設立後の税務署・県税事務所・市役所への届出まで対応します。
株式会社なら18万円〜。定款認証の手数料が資本金で変わるため、幅が出ます。合同会社は認証が不要なので、資本金にかかわらず6万円です。
電話 027-386-2807(平日9:00〜18:00)
ミノラス会計事務所(群馬県高崎市江木町610-10 ミノラスビル3階)
公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太















