「決算の2週間前に税理士から電話があって、利益が出すぎているので何か買いませんか、と言われた」
この電話を毎年もらっている社長は多いと思います。言われた側は「気にかけてくれている」と受け取りがちですが、私はこの電話を、顧問の関係がうまく回っていない合図だと考えています。利益が出ていることが決算の2週間前に初めて話題になる、ということ自体が問題だからです。
その時点で何ができて何ができないのか、提案される節税の中身は何か、本当はいつ何を決めるべきだったのかを書きます。
この記事の内容
決算2週間前の電話が意味していること
利益がいくら出るかは、期の後半に入れば、月次の数字を見ていればほぼ分かります。決算の2週間前に初めて「出すぎている」と言われるのは、税理士がそれまで数字を見ていなかったか、見ていたが伝えていなかったか、どちらかです。前者なら月次の試算表が機能していません。後者なら伝える仕組みがありません。
そしてこの電話は、たいてい「何か買いませんか」か「保険に入りませんか」とセットです。決算直前にできることは、お金を使って経費を作ることしか残っていないからです。報酬を変える、設備の時期を選ぶ、賞与の届出を出す、といった手段は、すべて期首か期中にしか使えません。2週間前に残っているのは、現金を減らして経費にする方法だけです。
その時点で提案されるものと、その限界
決算直前に提案される節税は、だいたい次の四つに収まります。
・備品や消耗品をまとめて買う。1つ30万円未満のものなら、買った期に全額経費にできる枠があります。ただし年間の上限があり、使わないものを買えば単にお金が減るだけです
・機械や車を買う。買った月からの月割りでしか経費にならないので、決算月に買っても1か月分です。決算直前の設備投資は、節税としてはほとんど効きません
・経営セーフティ共済(倒産防止共済)に入って、1年分を前払いする。掛金は全額経費で、年240万円まで。これは決算直前でも効く数少ない手段ですが、あとで解約すると戻ってきたお金が収入になるので、税金の先送りであって減額ではありません
・法人で保険に入る。経費になる割合は保険の種類で違い、いまは全額経費になるものはほぼありません。保険は節税の道具ではなく、必要な保障があるかどうかで決めるものです
四つのうち、決算2週間前でも本当に意味があるのは、使う予定が元々あった備品の前倒しと、資金に余裕がある場合の共済くらいです。それ以外は、税金を減らすために現金を減らしている、というのが実態です。
500万円使って税金を140万円減らす、という計算
利益が1,000万円出る見込みの会社を例にします。法人税と地方税を合わせた税金は、概算で約270万円です。ここで決算直前に500万円を使って経費にすると、利益は500万円になり、税金は約125万円。税金は約140万円減ります。
ただし、会社に残るお金で比べると、こうなります。
・何もしない場合:1,000万円から税金270万円を払って、約730万円が残る
・500万円使った場合:500万円を使い、税金125万円を払って、約375万円が残る
税金は140万円減りましたが、手元のお金は355万円減っています。使った500万円が、本当に必要なものに変わっていれば問題ありません。節税のために買ったものなら、税金を140万円減らすために355万円を失った、ということです。
決算直前の電話に乗るかどうかは、この計算を先にしてから決めてください。「税金が減る」という言葉だけで判断すると、手元のお金が減ることが見えなくなります。
本当は期中に決めるべきだった3つのこと
決算直前に残っている手段が少ないのは、効く手段を期首と期中に使っていないからです。本来、次の三つは期の前半で決めます。
一つ目は、役員報酬です。今期の利益の見込みを期首に立てて、それに合わせた報酬を期首3か月以内に決める。期の途中で上げても損金にならないので、期首に決めるしかありません。利益が出そうな期は報酬を高めに、個人の税金と会社の税金の合計が一番小さくなる水準を探します。詳しくは役員報酬を期の途中で上げたら、税務調査で否認されるの記事に書いています。
二つ目は、設備投資の時期です。今期買う予定の機械や車があるなら、期の早いうちに買えば、その期の経費になる月数が増えます。決算月に買えば1か月分、期首に買えば12か月分です。買う予定があるものを、いつ買うかの問題です。
三つ目は、納税資金です。利益が1,000万円なら税金は約270万円で、決算から2か月後に納めます。期の半ばでこの額が見えていれば、月に分けて準備できます。決算の2週間前に初めて知ると、納税のために借入をすることになります。
この三つを期中に決めている会社には、決算直前の「出すぎています」という電話は来ません。利益がいくら出るかは半年前から分かっていて、報酬と設備で調整できる部分は調整済みで、税金の額も納める準備もできているからです。
税金を払う決算は、悪い決算ではない
「利益が出すぎている」という言い方には、利益が出るのは良くないことだ、という前提が入っています。私はそう思いません。税金を払った残りが会社に積み上がることで、会社の純資産が増えます。純資産が増えれば、銀行の評価が上がり、借りられる額が増え、金利が下がります。次に大きな投資をするときや、不況で売上が落ちたときに、会社を支えるのはこの積み上がった部分です。
毎年、決算直前に節税で利益を削り続けている会社は、何年経っても純資産が増えません。決算書の上では利益が少なく、銀行からは「儲かっていない会社」に見えます。税金は減っていても、会社の体力はついていない。節税の積み重ねが、融資のときに自分の首を絞めることがあります。
税金を払うか、お金を使って税金を減らすかは、どちらが正しいという話ではなく、会社が何を優先するかで決めることです。ただ、その判断を決算の2週間前に、電話で、急かされてするのは違います。
来期から変えるなら、期首の1回で決まる
今期は、もう2週間しかないなら、第3節の計算をしてから決めてください。使う予定があったものの前倒し以外は、無理に動かなくてよいと思います。
来期から変えるなら、やることは一つで、期首に今期の見込みを立てる時間を税理士と持つことです。売上と利益の見込み、役員報酬、設備投資の予定、納税の見込み額。この4つを期首に1回決めておけば、あとは月次の数字で見込みとのずれを追うだけになります。決算直前の電話は要らなくなります。
いまの税理士とそれができるなら、変える必要はありません。「期首に見込みを立てたい」と言ってみて、月次の試算表が翌月中に来て、半年の時点で着地の見込みが出てくるなら、関係は機能しています。そうでないなら、決算直前の電話は来年も来ます。訪問がない・連絡がないという別の形で同じ問題が出ているケースは税理士が訪問に来ないの記事に、変えるなら決算後のどの時期がよいかは税理士を変えるタイミングの記事に書いています。
期首に見込みを立てて、決算直前の電話をなくしませんか
売上と利益の見込み、役員報酬、設備投資の時期、納税資金を期首に一緒に決めて、月次でずれを追います。今の税理士からの引き継ぎは当事務所が行います。
電話:027-386-2807(平日9:00〜18:00)
住所:群馬県高崎市江木町610-10 ミノラスビル3階
ミノラス会計事務所 公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太















