「税理士を変えようと思って3つの事務所に見積りを頼んだ。月2万円、2万5千円、3万円と返ってきて、何を基準に選べばいいのか分からなくなった」
月額だけ並べても選べません。3つの金額は、それぞれ違う作業に対する値段だからです。片方は記帳を自社でやる前提、もう片方は記帳込み。片方は年1回の決算だけ、もう片方は毎月の試算表付き。同じ「顧問料」という名前でも中身が違うので、金額を比べること自体に意味がない状態になっています。
相見積りは、同じ条件で取って、料金ではなく作業の範囲と担当者と連絡の方法を比べる。これで初めて選べるようになります。この記事では、その取り方を順番に書きます。
この記事の内容
見積りを取る前に、同じ資料を全部の事務所に出す
見積りの金額が揃わない一番の理由は、事務所ごとに渡した情報が違うことです。電話で年商だけ伝えた事務所と、決算書を見せた事務所では、出てくる数字の前提が違います。相見積りを取るなら、最初に資料を揃えて、全部の事務所に同じものを渡してください。
・直近の決算書と申告書の控え(1期分でよい)
・今の顧問契約の内容(月額、決算料、何が含まれているか)
・月の取引件数の目安(通帳とカードの明細の行数で十分)
・従業員数と、給与計算・年末調整を頼みたいかどうか
・使っている会計ソフトと、記帳を自社でやっているか事務所に出しているか
・今の税理士で困っていること(1〜2行でよい)
この6点を1枚にまとめて渡せば、どの事務所も同じ前提で見積りを出せます。決算書を見せるのをためらう方がいますが、決算書を見ずに出た見積りは、契約後に「思ったより取引が多いので」と上がることが多い。最初から見せたほうが、後で変わらない数字が出ます。
月額が違う理由は、作業の範囲にある
同じ資料を渡しても月額に差が出るとき、その差はほぼ作業の範囲の違いです。見積りを受け取ったら、次の項目がそれぞれ込みなのか別なのかを、書面で確認してください。
・記帳(仕訳の入力)は事務所がやるのか、自社がやるのか
・試算表は毎月か、四半期か、年1回か。届くのは翌月のいつか
・決算料は月額に含むのか、別に何か月分か
・消費税の申告、年末調整、償却資産の申告、法定調書は込みか
・税務調査が来たときの立会いは、別料金か
・期の途中の相談(設備を買う、人を雇う、融資を受ける)は、月額の範囲か
たとえば、月2万円で記帳は自社・試算表は年1回という見積りと、月3万円で記帳込み・試算表は毎月という見積りがあったとします。年額の差は12万円です。自社で記帳に月20時間かかっていて、それを事務員の時間で払っているなら、その20時間分の人件費は12万円をかなり上回ります。しかも年1回の試算表では、期の途中で今期の利益と税金の見込みが分かりません。月額の差だけ見れば2万円のほうが安く、作業の範囲まで見れば3万円のほうが安い、ということが普通に起きます。
顧問料の中身をどう見るかは顧問料が高い気がするの記事に、年1回の顧問で期中に決められなくなっているものは税理士が訪問に来ないの記事に書いています。
料金以外に比べる3つのこと
作業の範囲を揃えて比べても、まだ同じ値段で2つ残ることがあります。そこで決めるのは、次の3つです。顧問契約で後から困るのは、ほぼこの3つのどれかです。
1つ目:担当者は誰か。面談に来た人が担当するのか
見積りの面談に出てきた人と、契約後に担当する人が違う事務所は多いです。それ自体は悪いことではありませんが、契約前に「誰が担当するのか」「その人はどのくらい続くのか」は聞いてください。担当者が1年ごとに変わる事務所だと、毎年自社の説明をやり直すことになります。
2つ目:連絡の方法と、返事までの日数
質問をメールで送るのか、チャットか、電話だけか。返事は何日以内に来るのが普通か。これは事務所によって本当に違い、契約後の満足度にそのまま効きます。「いつでも聞いてください」ではなく、「原則2営業日以内に返します」のような具体的な答えが返ってくるかを見てください。
3つ目:今の税理士からの引き継ぎを、誰がどこまでやるか
前の税理士から受け取る資料の一覧を出してくれるか、会計ソフトの移行作業を事務所側でやるか、開始残高と固定資産台帳の入力は誰がやるか。ここが「お客様でお願いします」の事務所と「こちらでやります」の事務所で、最初の3か月の負担がまるで違います。引き継ぎで受け取る資料は顧問税理士から「廃業する」と言われたの記事に6点として書いています。
面談で、自社の決算書を見せて聞く
面談では、料金の話の前に、自社の決算書を見せて「気になる点はありますか」と聞いてみてください。この質問への答えで、その事務所が自社の数字をどう見るかが分かります。
決算書を見た税理士は、普通は何かに気づきます。社長への貸付金が膨らんでいる、在庫が何年も同じ金額になっている、役員報酬が利益に対して低すぎる、借入の返済が利益より多い。その場で1つでも具体的に言ってくる事務所は、契約後も数字を見て話してくる事務所です。「特に問題ないですね」で終わる事務所は、契約後も決算書を作って終わりになりがちです。
もう1つ、安さだけで選ぶと起きることを書いておきます。契約後に「取引が多いので」と月額が上がる、担当者が頻繁に変わる、期の途中の相談が別料金になる。これらは安い見積りを出した事務所が、どこかで帳尻を合わせている形です。最初の見積りが安い理由を、面談で聞いてよいです。答えが「記帳は自社でやっていただく前提です」のように明確なら問題なく、はっきりしなければ、後で上がる見積りです。
年額の表にして比べる
見積りが揃ったら、月額ではなく年額で表にします。縦に作業項目、横に事務所。月額×12に決算料と、年末調整や消費税申告などの別料金を足して、年に払う総額を1行目に書く。その下に、記帳は誰か、試算表の頻度、担当者、連絡方法、引き継ぎの範囲を並べます。
この表を作ると、月額で一番安かった事務所が年額では一番高い、ということがよく起きます。決算料が月額の3か月分や4か月分で別建てになっている事務所と、月額に含んでいる事務所を、月額だけで比べていたからです。年額に直して、作業の範囲を揃えて、担当者と連絡方法を見る。ここまでやれば、どこにするかは自然に決まります。
なお、今の税理士から値上げを言われたことがきっかけで相見積りを取る場合は、値上げ後の料金もこの表の1列に入れてください。今の事務所が妥当だと分かって残る、という結論も普通にあります。
見積りを出す側の税理士が、確認すべき場面
見積りを出す側の税理士が、金額を出す前に確認すべきことも書いておきます。これを確認せずに出た見積りは、契約後に変わります。
・決算書を見ているか。年商だけで出した見積りは前提が足りない
・月の取引件数と、記帳をどちらがやるかを確認しているか
・消費税の課税事業者かどうか、計算方式は何か
・給与計算と年末調整の人数、法定調書の有無
・今の税理士との契約で、何が含まれていたか。同じ範囲で出すか、変えるかを明示しているか
当事務所は料金表を公開していて、見積りは決算書と取引の量を見てから出します。含まれる作業と含まれない作業は書面で分けてお渡しし、面談に出た担当者がそのまま続けます。相見積りの1つとして見ていただいて構いません。表に並べたときに、作業の範囲と年額で比べられる形で出します。
相見積りの1つに、当事務所を入れてみませんか
決算書と取引の量を見てから、含まれる作業を書面で分けた見積りをお出しします。他の事務所の見積りと年額で比べていただいて構いません。
電話:027-386-2807(平日9:00〜18:00)
住所:群馬県高崎市江木町610-10 ミノラスビル3階
ミノラス会計事務所 公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太















