税理士に「やめます」をどう伝えるか|理由は言わなくてよく、伝えるのは終了日・受け取る資料・それまでの業務の3つ

「税理士を変えると決めた。でも、長く付き合った先生にどう切り出せばいいか分からなくて、気づいたら半年経っていた」

税理士の変更で一番多い損は、伝え方で迷って半年、1年が消えることです。変えると決めた理由が何であれ、その間ずっと同じ状態が続きます。伝え方そのものは難しくありません。理由は言わなくてよく、伝えるのは終了日、受け取る資料、それまでにやってもらう業務の3つだけです。これを書面で送れば終わります。

この記事では、その3つの中身と、伝える時期、伝えた後に起きることへの対応を書きます。私も顧問先から「やめます」と言われる側の人間なので、言われる側がどう受け取るかも含めて書きます。

理由は言わなくてよい

顧問契約は、どちらからでも終わらせられる契約です。終わらせるのに理由は要りません。「来期から別の体制にすることにしました」で足ります。理由を聞かれても、「社内で決めたことなので」で止めて構いません。

理由を言わないほうがよいのは、言った瞬間にその理由をめぐる話し合いが始まるからです。「訪問が少ない」と言えば「では毎月行きます」と返ってきて、「料金が高い」と言えば「では下げます」と返ってくる。そこで気持ちが揺れて、結局変えないまま、もう1年同じことを繰り返す。これが伝え方で迷っていた人が一番はまる形です。変えると決めた時点で、理由の話し合いは終わっています。

言われる側の実感として書いておくと、理由を言われないことは失礼ではありません。顧問先が離れるとき、こちらは理由を聞きたくなりますが、聞いたところで引き継ぎの中身は変わらない。黙って区切りをつけてもらうほうが、お互いに後味がよいことのほうが多いです。

伝える時期は、申告が終わった直後。先に契約書を見る

伝える時期は、その期の決算と申告が終わった直後が一番きれいです。申告が終わった時点で、前の税理士の仕事は一区切りついていて、引き継ぐものも確定しています。「今期の申告ありがとうございました。来期から別の体制にします」という流れは、言う側も言われる側も一番整理しやすい。

その前に、顧問契約書を見てください。解約の予告期間が書いてあることが多く、1か月前か3か月前が普通です。3か月前と書いてあれば、申告が終わった直後に伝えても、実際の終了は3か月後になります。その3か月分の顧問料は払うことになるので、逆算して、申告の終わる月の3か月前に伝えるほうがよい場合もあります。契約書が見つからないか、そもそも契約書がない場合は、予告期間はないものとして、1〜2か月の余裕を見て伝えれば十分です。

期の途中で伝える場合は、「今期の申告までお願いして、その後で終了」と区切るか、「今月末で終了し、今期の申告は次の税理士で」と区切るかを決めます。前者のほうが引き継ぎは楽で、後者は費用が二重になりにくい。どちらにするかの考え方は税理士を変えるタイミングの記事に書いています。

伝えるのは3つ。書面で残す

口頭で伝えてもよいのですが、その後に必ずメールか書面で同じ内容を送ってください。終了日と受け取る資料をめぐって「言った、言わない」になるのを防ぐためです。書くのは次の3つです。

1つ目:契約の終了日

「○月○日をもって顧問契約を終了します」と、日付で書きます。「来期から」「申告が終わったら」のような書き方は、いつまで顧問料が発生するかで食い違いが出るので、日付にします。

2つ目:終了日までに受け取る資料

決算書と申告書の控え、総勘定元帳、固定資産台帳、消費税や青色申告などの届出の控え、年末調整の資料、そして会計データ。この6点を列挙して、「終了日までにお渡しください」と書きます。受け取るべき資料の中身は顧問税理士から「廃業する」と言われたの記事に書いていて、廃業でなく自分から変える場合も同じです。預けている原始資料、つまり通帳のコピーや請求書・領収書の原本があれば、それも返してもらいます。

3つ目:終了日までにやってもらう業務

今期の決算と申告、年末調整、償却資産の申告、法定調書など、終了日の前に期限が来るものを書きます。「ここまではお願いします」と線を引いておかないと、終了日の直前で「それは次の税理士でやってもらってください」と言われることがあります。顧問料を払っている期間の業務は、最後までやってもらうのが当然です。

伝えた後に起きること3つと、その対応

伝えた後に起きることは、ほぼ3つに決まっています。どれも想定しておけば、揺れません。

1つ目は、引き止めです。値下げ、訪問回数を増やす、担当者を変える。これに乗るかどうかは、変えると決めた理由がそれで解消するかで判断します。解消するなら残ってもよい。ただ、言われてから変えると約束された条件は、1年経つと元に戻っていることが多い、というのが私の実感です。

2つ目は、「税理士を変えると税務調査が来る」という類の発言です。これは引き止めの一種で、事実ではありません。変更が調査の引き金にならない理由は税理士を変えると税務調査が来る、は本当かの記事に書いています。言われたら、そうですか、と流して構いません。

3つ目は、資料の出し渋りです。「データは事務所のものなので渡せない」「元帳は印刷代をもらう」と言われることがあります。決算書と申告書の控え、総勘定元帳は、依頼者である会社のために作られたもので、会社が受け取る権利があります。会計データの形式は事務所のソフトに依存するので、そのままの形で受け取れない場合もありますが、元帳を印刷かPDFで受け取れれば、次の事務所はそこから引き継げます。出し渋られたら、終了日と受け取る資料を書いたメールをもう一度送り、「終了日までにお願いします」と繰り返す。感情的にならず、同じことを書面で繰り返すのが一番効きます。

次の税理士を決めてから伝える

順番として、今の税理士に伝えるのは、次の税理士を決めた後です。先に伝えて、次を探している間に申告の期限が来る、というのが一番避けたい形です。顧問税理士がいない期間を作らない、これだけ守れば、変更で困ることはほぼありません。

次の税理士が決まっていれば、「前の税理士に何を頼んでおくか」をその事務所に聞けます。受け取る資料の一覧も、終了日をどこに置くかも、次の事務所が指定してくれる。今の税理士に送るメールの文面も、次の事務所に見てもらえばよい。伝え方で迷って半年、という状態は、次を先に決めてしまえば起きません。

新しい税理士が、引き継ぎで確認すべき場面

新しく顧問を受ける側の税理士が、契約の前に確認すべきことは決まっています。この確認をしない事務所は、引き継ぎで止まります。

・今の契約の解約予告期間と、終了日をいつにするか

・受け取る資料の一覧を、会社が前の税理士に送れる形で渡しているか

・消費税の届出の状況を、前の税理士の控えで確認できるか。簡易課税の選択や取りやめは、出した時期で効き方が変わる

・電子申告の番号を前の税理士が管理している場合、引き継ぐか取り直すか

当事務所で顧問を受けるときは、契約の前に、今の税理士に伝える内容の整理と、受け取る資料の一覧を用意します。前の税理士への連絡そのものは会社から送っていただきますが、何を、いつ、どう書くかは一緒に決めます。伝え方で止まっている方は、文面を一緒に作るところから始められます。

税理士を変えることは、付き合いを切ることではなく、会社の体制を変えることです。理由を言わず、日付と資料と業務を書いて送る。それで前の税理士との関係は、きちんと終わります。

今の税理士に伝える前に、次の体制を決めませんか

終了日の置き方、受け取る資料の一覧、今の税理士に送る文面まで、契約の前に一緒に整理します。申告が終わってからの切り替えで構いません。

税理士の変更をご検討の方へ/料金のご案内

電話:027-386-2807(平日9:00〜18:00)

住所:群馬県高崎市江木町610-10 ミノラスビル3階

ミノラス会計事務所 公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太