会社設立後の届出一覧|青色申告を出し忘れて70万円損をした話【群馬・高崎】

「前の期は自分で申告しました。今期からお願いできますか」

11月に来られた高崎市内の商社の方です。医療機関や介護施設に備品を卸している会社で、設立から1年半、登記も届出も決算も全部ひとりでやってきた。2期目に入って手が回らなくなったので顧問を頼みたい、という相談でした。

持参されたのは紙の控えでした。手書きで作成された法人税の申告書を見たのは、正直なところ久しぶりです。国税庁のサイトから様式を印刷して、電卓を叩いて、自分で書いて窓口に出した。そこまでやり切ったこと自体は立派だと思いました。

その控えを一式見せてもらいます。法人設立届出書はありました。給与支払事務所等の開設届出書もありました。青色申告の承認申請書だけが、どこにもない。

この時点で1期目は白色で確定していて、あとから取り返す方法はありません。

会社設立後の届出は、種類が多いことよりも、提出先がばらばらで期限もそろっていないことが厄介です。この記事では高崎で設立した場合にどこへ何を出すのかを、提出先ごとに整理します。

期限が一番短いのは社会保険。5日以内

届出の期限を並べると、一番短いのは税務署のものではありません。年金事務所に出す健康保険・厚生年金保険の新規適用届で、事実の発生から5日以内です。

法人は社会保険が強制適用です。従業員がいなくても、役員が自分ひとりでも入ります。個人事業のときに国民健康保険と国民年金だった方は、ここで負担が一段上がります。

ただし現実には、登記が完了して登記事項証明書が出るまで手続きができません。申請から完了まで1週間から10日かかるので、5日以内という期限は最初から守れない構造になっています。証明書が出たらすぐ動く、という理解で問題ありません。

窓口は高崎年金事務所です。役員報酬をいくらにするかが決まっていないと保険料が計算できないので、設立の段階で金額を固めておいてください。

提出先は4つ。どこへ何を出すか

税務署

一番量が多いのがここです。

法人設立届出書(設立から2か月以内)

青色申告の承認申請書(設立から3か月を経過した日と1期目末日の、早いほうの前日まで)

給与支払事務所等の開設届出書(設立から1か月以内)

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(期限なし。出した翌月分から適用)

減価償却資産の償却方法の届出書、棚卸資産の評価方法の届出書(1期目の申告期限まで。出さなければ法定の方法になります)

消費税の関係は、免税で始めるのか、インボイス登録をするのかで出すものが変わります。ここは業種と取引先で判断が分かれるので、ひとまず保留にして後から決めても間に合うことが多い。

群馬県の県税事務所と高崎市役所

法人設立届出書を、県と市の両方に出します。同じ名前の書類ですが、税務署に出したものとは別物です。3か所に同じような紙を出すことになります。

提出期限は自治体ごとに定めが違うので、登記事項証明書が出たらまとめて処理してしまうのが確実です。定款の写しと登記事項証明書を添付します。

この届出を出すと、法人住民税の均等割が発生します。赤字でも払う税金です。資本金1,000万円以下で従業員50人以下の会社なら、県と市を合わせて年間7万円が目安になります。休眠にしない限り毎年かかると考えておいてください。

年金事務所

健康保険・厚生年金保険 新規適用届

被保険者資格取得届

扶養する家族がいれば被扶養者異動届

労働基準監督署とハローワーク

従業員を雇う場合だけです。役員だけの会社なら不要です。

労働保険 保険関係成立届(労働基準監督署/10日以内)

概算保険料申告書(同/50日以内)

雇用保険適用事業所設置届と被保険者資格取得届(ハローワーク/10日以内)

アルバイトを1人雇った時点で必要になります。人を入れる予定があるなら、雇う前に確認しておいたほうがいい。

青色申告の承認申請書だけは絶対に落とせない

冒頭の商社の方の話に戻ります。

設立は5月10日、決算期は4月末。青色申告の承認申請書の期限は、設立から3か月を経過した日の前日、つまり8月9日でした。相談に来られたのは、その1年3か月後の11月です。

1期目は倉庫の賃料と営業車、それに社員1名の人件費が先に出ていく期間でした。前職は医療機器メーカーの営業で、取引のあった医院からいくつか声はかかったものの、口座を開いてもらうまでには時間がかかる。粗利が固定費に追いつかず、1期目は320万円ほどの赤字で終わっています。

2期目に入って、介護施設との定期納品が固まりました。消耗品を毎月同じ量だけ納める取引です。黒字が450万円ほど。青色申告なら1期目の赤字を繰り越して、課税される所得は130万円まで下がっていました。白色なので、それができません。

この差が、法人税と住民税、事業税を合わせて80万円ほどになりました。紙を1枚出していれば消えていた金額です。ご本人には、決算書を見た日にそのまま伝えました。言いにくい話ですが、黙っていても翌年また同じことが起きます。

せめてもの救いは、2期目からは青色にできることでした。1期目が終わる日、つまり4月30日までに申請書を出せば2期目は青色です。11月の時点なら間に合うので、その場で作成して出しました。

青色申告でできることは、赤字の繰越だけではありません。少額減価償却資産の特例も、青色でないと使えない制度です。一定額未満の資産を、買った年に全額経費にできる。倉庫の棚や展示用のサンプル、パソコンを少しずつ買い足していく段階の会社にとっては、これも小さくない差になります。

この特例の金額は、当時は30万円未満でした。その後の税制改正で引き上げられ、2026年4月1日以後に取得した資産からは40万円未満が基準になっています。年間300万円までという上限は変わっていません。使える範囲が広がったぶん、青色かどうかで開く差も以前より大きくなりました。

源泉所得税の納期の特例を出さないと、毎月納付になる

見落とされやすいのがこれです。期限がないので、うっかりすると誰も催促してくれません。

役員報酬や給料から天引きした源泉所得税は、原則として翌月10日までに納めます。毎月です。役員1人の会社でも毎月です。

給与を支払う人数が常時10人未満なら、納期の特例を申請できます。承認されると年2回、7月10日と1月20日にまとめて納めればよくなる。事務の手間が12分の2になります。

出し忘れて毎月の納付を続けていて、しかも納付を忘れる。この流れで不納付加算税を取られた例を何度も見ています。金額そのものより、気づかないまま積み上がるのがよくない。

申請書を出した月の翌月分から適用されるので、設立直後に出しておくのが一番損がありません。

登記完了から2週間で全部終わらせる段取り

当事務所でお手伝いする場合の順番です。

登記完了の翌日 登記事項証明書と会社の印鑑証明書を取得。証明書は3通ほど取っておくと足ります

同じ週 銀行口座の開設を申し込む。ここが一番時間がかかるので最優先

同じ週 年金事務所へ新規適用の手続き

翌週 税務署へ4点。設立届、青色申告承認申請書、給与支払事務所の開設届、納期の特例

翌週 県税事務所と高崎市役所へ設立届

証明書は取得のたびに手数料がかかります。1通ずつ取りに行くと、その都度前橋地方法務局高崎支局まで足を運ぶことになる。使う予定を数えて、まとめて取っておいてください。

設立までの流れは会社設立の流れと必要書類に書きました。あわせて読んでいただくと、登記の前と後がつながります。

融資を受けるなら、届出は先に片づけておく

創業融資を申し込むつもりなら、届出は融資の前に終わらせておくことをおすすめしています。

審査で提出を求められる書類の中に、登記事項証明書や、場合によっては税務署の受付印がある設立届の写しが入ることがあります。そこで「まだ出していません」となると、面談の日程がそのぶん後ろにずれる。創業融資の必要書類一覧で何を求められるかを確認しておいてください。

それと、役員報酬の金額です。社会保険の手続きでも融資の審査でも同じ数字を見られます。生活費として取りすぎれば会社の資金繰りが苦しくなり、抑えすぎれば生活が回らない。資本金と役員報酬をどう置くかは資本金はいくらにすべきかでも触れています。借入先の選び方は創業融資はどこで借りるべきかにまとめました。

この商社の方は、3期目に入ってから在庫を厚くするための運転資金を借りています。届出を整え、青色で決算書を作れる状態にしてからだったので、話が早かった。届出は事務作業に見えて、実際には決算書の質と融資の通りやすさに直結します。

設立後の届出でお困りの方へ

自分で登記した方の届出だけを整える対応もしています。顧問契約のご相談をいただいた際は、過去に提出した書類の控えを一式拝見して、抜けがないかを最初に確認します。青色申告の承認申請書は期限を過ぎると取り返せません。設立からまだ3か月経っていないなら、すぐご連絡ください。

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