「注文書は分かれているので、1件ずつは500万円未満です」
高崎市内で造成工事をされている方が、融資の面談から戻ってきて言われた言葉です。法人成りして2年目、建設業許可はまだ取っていませんでした。
保証協会の審査で、直近の工事実績を1件ずつ確認されていました。そこで出てきたのが、同じ分譲地の造成を2枚の注文書に分けた案件です。造成工事で税込462万円、擁壁工事で税込418万円。合わせて880万円。
結論から書くと、融資は止まりました。許可を取ってからの出直しになり、そこまで3か月かかっています。
500万円の線引きは、建設業法の話だと思われがちです。実際には資金調達の話でもあります。この記事では、その両面から書きます。
目次
許可がなくても請けられるのは、1件500万円未満まで
建設業許可がなくても請け負える工事を、軽微な建設工事といいます。
建築一式工事以外 1件500万円未満(消費税込み)
建築一式工事 1件1,500万円未満、または木造住宅で延べ面積150平方メートル未満
この範囲に収まっているうちは、許可を取る義務はありません。一人親方や小規模な工事店の多くが、この線の内側で仕事をしています。
問題は、超えたときです。無許可で500万円以上の工事を請け負えば建設業法違反になります。罰則の対象になるだけでなく、その後に許可を申請するときの欠格要件にも関わってきます。取り締まられなければいい、という性質の話ではありません。
判定は税込。本体480万円でも超える
意外と多いのがこの勘違いです。500万円は消費税込みで判定します。
本体価格480万円の工事は、税込で528万円です。500万円を超えています。見積書の本体価格だけを見て「480万だから大丈夫」と判断すると、そこで違反が発生します。
逆算すると、税込500万円に収まる本体価格はおよそ455万円までです。450万円を超えたら一度立ち止まる、くらいの感覚で見ておいたほうがいい。
材料を発注者が支給する場合は、その材料費も含めて判定します。手間だけを請け負ったつもりでも、金額の見方が変わることがあります。
分けても合算される。実質同一とは何を見て判断されるのか
1件の工事を2つの契約に分けても、実質が1つなら合算して判定されます。これは法律上そう決まっています。
では何をもって実質同一と見るのか。冒頭の案件で指摘されたのは、次のような点でした。
発注者が同じ
現場が同じ物件
工期が連続している、または重なっている
注文書の日付が近接している
作業として一体で、片方だけでは成り立たない
造成と擁壁は、施工としては別の工程です。それでも同じ現場の同じ区画で、擁壁を立てずに盛土だけを仕上げることはできません。名目が違っても一体の工事だと見られました。
この方の場合、別の発注についても同じ見方をされています。発注者が変わっていても、現場と工期がつながっていれば実質同一ではないかと問われる。1件ずつ説明を求められました。
意図的に分けたわけではありませんでした。元請の側の予算の都合で注文書が分かれることは、実際によくあります。ただ、意図の有無は判定に影響しません。
では分割された注文書を渡されたらどうするか。断るか、許可を取るか、そのどちらかしかありません。受け取る側で名目を調整しても、合算されるものは合算されます。
元請に事情を伝えて、金額を500万円未満に収まる範囲まで工事の内容そのものを絞ってもらう方法はあります。ただこれは工事を小さくするということなので、売上も落ちます。根本的な解決にはなりません。
融資審査では、工事実績を1件ずつ見られる
ここからが、あまり語られていない部分だと思います。
信用保証協会の保証付き融資を申し込むと、建設業では直近の工事実績を確認されます。決算書の売上高だけでなく、その中身です。注文書、請書、請求書。1件ずつ金額と工期を見ていきます。
見られているのは2つです。売上が実在するかどうか。そして、その工事を請け負う資格があったかどうか。
無許可で500万円以上の工事を請けていれば、それは違法な売上です。決算書に載っている数字の一部が、そもそも成立していなかったことになる。融資判断の土台が崩れます。
同じ発注者から近い時期に分割された注文書が出てくれば、当然そこを聞かれます。「分けているだけではないか」という問いに、説明できる材料が要ります。
許可申請そのものは提携している行政書士が担当していますが、こうした確認は決算書と工事台帳の両方を突き合わせる作業なので、税務の側から見えることが多い。融資の準備で何を求められるかは創業融資の必要書類一覧にも書きましたが、建設業ではこれに工事関係の書類が加わると考えてください。
対策は難しくありません。工事台帳を、発注者と物件と工期で並べておくことです。金額順ではなく、現場ごとに並べる。そうすれば、同じ物件で複数の注文書が立っている案件はひと目で分かります。
売上を月次で締めているだけでは、この並びは出てきません。会計上は1件ずつ独立した売上として計上されるからです。工事台帳と会計を別々に見ている限り、気づくのは融資の面談の場になります。
融資が止まると、資金繰りは3か月では済まない
冒頭の方は、許可を取ってから出直すことになりました。申請の準備と審査で3か月です。
ただ、苦しかったのは3か月ではありません。融資を前提に組んでいた支払いの予定が、そのまま残ったからです。
建設業は入金より先に支払いが出ます。材料費と外注費は現場が終われば請求が来ますが、元請からの入金は締めて翌々月ということも珍しくない。その立替え分を借入で埋めるつもりだったのに、それがなくなった。
結果として、受注を絞ることになりました。取れるはずの仕事を断って、資金が回る範囲まで規模を落とす。許可が下りて融資が実行されたあとも、元に戻すまでにさらに時間がかかっています。
融資が止まる本当のコストは、借りられなかった金額ではありません。その間に失った受注です。落ちたあとの立て直し方は創業融資に落ちたらどうするかにも書きました。
500万円の話が来たら、それは許可を取る合図
500万円を超える話が年に何度か来るようになったら、許可を取る時期だと考えています。
線の内側で仕事を選び続けると、単価が上がりません。元請の側も、大きい工事を任せられる相手を探しています。許可があるかないかで、声のかかり方が変わる。
許可を取る前提が整うのは、法人成りしたタイミングです。社会保険への加入が許可の要件に入っているので、法人であれば自動的に満たします。財産的基礎の500万円も、設立時の資本金で押さえられる。すでに個人で許可を持っているなら、承継の手続きを先に検討してください。順番の整理は建設業許可と法人成り、どちらが先かに書いています。
法人成りそのものの進め方は一人親方の法人成りに、資本金の決め方は資本金はいくらにすべきかにまとめました。運転資金の考え方は運転資金と設備資金の違いを参考にしてください。
分割された注文書を受け取ったときに、その場で判断できるかどうか。工事台帳と決算書を毎月つないで見ていれば、超えそうな案件は事前に分かります。融資の面談で初めて指摘される、という順番にしないことが一番の対策です。
建設業の資金調達と許可でお悩みの方へ
工事実績の整理、決算書と工事台帳の突き合わせ、融資の申込みまで一つの窓口でご相談いただけます。建設業許可の申請そのものは、提携している行政書士が担当します。500万円を超えそうな案件が出てきた段階でご相談ください。
ミノラス会計事務所
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公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太















