売上の計上時期|期ズレが税務調査でいちばん指摘される理由

「請求書を出した月の売上にしています。ずっとそうしてきました」

調査で期ズレを指摘された社長の言葉です。悪いことをしている自覚はまったくありません。実際、不正ではありません。ただ、税務上の計上時期は請求書を出した日では決まりません。

売上の計上時期のズレ、いわゆる期ズレは、税務調査で最も多く指摘される論点です。理由は単純で、どの会社でも起こりうるからです。売上を隠す意図がなくても、締めの運用が税務のルールと合っていなければ、そこで差が出ます。

しかも期ズレには、独特の分かりにくさがあります。翌期に戻るので、最終的に払う税金は増えないはずなのに、実際には損をします。公認会計士・税理士の長島祐太が、その仕組みと、伸びている会社ほど金額が出る理由を書きます。

基準は請求日でも入金日でもない

法人税では、売上は原則として引渡しの日に計上します。物を売る場合は物を渡した日、サービスの場合は役務の提供が完了した日です。請求書をいつ出したか、いつ入金があったかは関係ありません。

物の引渡しがいつかについては、出荷した日、相手が検収した日、相手が使い始めた日など、実態に合う基準を選べます。ただし、選んだら毎期続けて使う必要があります。都合のいい年だけ基準を変えることはできません。

請負の場合は、物の引渡しがあるものは引渡しの日、設計や調査のように物の引渡しがないものは、その仕事が完了した日です。

現場で問題になるのは、この「引渡し」や「完了」が社内のどの書類で確認できるかです。納品書なのか、検収書なのか、作業完了報告書なのか。調査ではその書類の日付と売上の計上月が突き合わされます。

業種ごとに起きやすい形

期ズレは業種によって出方が違います。

卸売や製造業で多いのは、月末の出荷分です。出荷基準を採っているのに、締め日を過ぎた出荷を翌月に回している。出荷伝票と請求書を突き合わせれば、すぐ分かります。

サービス業や保守契約のある業種では、前受けの処理が論点になります。年間契約の料金をまとめて受け取って、受け取った期に全額を売上にしている。実際には期末時点でまだ提供していない期間があるので、その分は前受収益として翌期に繰り延べなければなりません。

小売や通販では、出荷日と決済日のずれです。決済代行会社からの入金日で売上を計上していると、月末の注文がまとめて翌月になります。

費用の側にも期ズレがある

売上だけでなく、費用を前倒しで落としているケースも同じ論点です。

よくあるのが、期末に払った翌期分の家賃や保険料、年会費です。原則として、翌期に対応する分は前払費用として資産に計上します。期末に払ったから今期の経費だ、とはなりません。

ただし、支払日から1年以内に提供を受ける役務で、毎期続けて同じ処理をしているなら、支払った期の経費として認められる取扱いがあります。短期前払費用と呼ばれるものです。

気をつけたいのは、この取扱いは継続適用が条件だということです。利益が出た年だけ年払いに切り替える、というやり方は認められません。

翌期に戻るのに、なぜ損なのか

期ズレの指摘を受けると、今期の売上が増えます。ただし、その売上はもともと翌期に計上されているので、翌期の売上からは同額が引かれます。2期を通算すれば所得は変わりません。

では何も起きないのかというと、そうではありません。失うものが3つあります。

・過少申告加算税。増えた本税に対して10%かかります

・延滞税。本来の納期限から納付日までの期間で計算されます

・資金繰り。翌期に戻るとはいえ、いま払う現金は必要です

加算税と延滞税は戻りません。ここが期ズレのやっかいなところです。所得は動かないのに、罰の部分だけが残ります。

伸びている会社ほど金額が出る

もうひとつ、あまり知られていない性質があります。

毎期同じくらいの金額がずれている会社なら、今期に加算される分と、前期から繰り越されてくる分が相殺されるので、所得への影響は小さくなります。売上が横ばいの会社が長年同じ処理をしていても、指摘額はそれほど大きくなりません。

金額が出るのは、売上が伸びている会社です。期末にずれている金額が前期より大きくなっているぶんだけ、差額が所得の増加として出てきます。伸びが急なほど、その差は開きます。

売上が伸びているのに利益がついてきていない会社は、そもそも確認の対象になりやすい。そこに期ズレがあると、指摘額も大きくなります。どういう決算書が目に付くのかは税務調査が来やすい会社の特徴に書きました。

受注が倍になった舗装工事会社の例

舗装工事の会社です。社員11名、売上1億8,000万円。民間の駐車場や工場構内の舗装と、官公庁の道路補修が半々くらい。3月決算でした。

この会社は、請求書を出した月の売上にしていました。工事が3月中に終わっていても、請求書の発行が4月になれば4月の売上です。年度末は工期が集中するので、3月末に完了した工事がまとまって翌期に回っていました。

調査では、完了報告書と請求書の日付が突き合わされました。3月中に完了報告を出している工事のうち、請求が4月になっているものを拾い出した形です。

該当したのは当期末で720万円。ただし前期末にも同じ性質のものが300万円ありました。前期分は前期の売上に入っているので、今期に加算されるのは差額の420万円です。物流施設の外構工事を受注したことで年度末の稼働が2年で倍以上になっていて、その分だけ差が開いていました。

420万円に対する法人税等が約126万円、過少申告加算税が約12万円、これに延滞税が加わりました。翌期には420万円が売上から落ちるので本税は戻りますが、加算税と延滞税は戻りません。

社長には「伸びていなければ、ここまでの金額にはなりませんでした」と説明しました。請求書を出した月に計上するという運用は10年以上前から同じです。会社が伸びたから、同じ誤りの金額が大きくなった。年度末に仕事が集中したことが、そのまま指摘額になった形です。

この会社はその後、完了報告書を出した時点で工事台帳に完了日を入れ、月末に未請求の完了工事を一覧で出す形に変えました。請求業務のタイミングは変えていません。売上の計上だけを完了日に合わせた形です。

起こさないための実務

難しいことをする必要はありません。やるのは3つです。

ひとつは、自社の売上をいつの時点で計上するかを決めて、文章にしておくこと。出荷日なのか、検収日なのか、完了報告の日なのか。決めたら毎期同じにします。

ふたつめは、その日付が分かる書類を残すこと。納品書、検収書、完了報告書、出荷伝票。請求書だけでは日付の証拠になりません。

みっつめは、決算月の前後1か月だけ、きちんと見直すことです。期ズレはほぼ全部この2か月に集まります。年間の取引を全部見る必要はありません。

それから、毎期同じ形で繰り返している処理は、調査の対象期間そのものを伸ばす引き金になります。3年で終わるはずが5年になる仕組みは税務調査は何年さかのぼるか|3年・5年・7年の分かれ目に書きました。期ズレはまさにこの型に当てはまります。

自社の計上時期が正しいか確認したい方へ

ミノラス会計事務所では、決算月の前後1か月の売上と仕入を、納品書や検収書と突き合わせて確認しています。前受けや前払いが残っていないかもあわせて見ます。指摘される前に直せば、加算税も延滞税もかかりません。

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公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太