会社の車を休日にも使っている|税務調査で社用車の私的使用がどう見られ、何を残せば通るか

「会社の車、休みの日に家族で乗っていますけど、まずいですか」

群馬は車がないと動けない土地なので、社長が会社名義の車を通勤にも買い物にも使っている、という会社はいくらでもあります。それ自体がすぐに問題になるわけではありません。問題になるのは、私用で使っている分まで会社の経費として落としていて、その割合を説明できないときです。

調査官が社用車の何を見るのか、按分で済む場合と給与と見られる場合の違い、高級車は通るのか、何を残しておけばよいのかを書きます。

社用車の経費は、車両代だけではない

会社名義の車にかかる経費は、車両の減価償却費だけではありません。ガソリン代、自動車保険、自動車税、車検と整備、駐車場代、高速代。600万円の車なら、減価償却が年に100万円前後、維持費が年に60万円前後で、合わせて年160万円ほどが経費として落ちています。

この160万円が全額経費になるのは、車が全部事業に使われている場合です。半分が私用なら、経費にできるのは80万円で、残りの80万円は経費ではありません。調査で問われるのは、この「何割が事業か」という一点です。

調査官が見る4つの手がかり

社用車の私的使用は、帳簿を見ただけでは分かりません。調査官は帳簿の外にある手がかりを四つ見ます。

一つ目は、車の台数と人の数です。社長一人の会社に車が3台あれば、1台は家族が乗っていると見ます。従業員5人の会社に車が7台あっても同じです。台数が人数を超えている会社は、まずここから聞かれます。

二つ目は、ガソリン代と高速代の日付と場所です。土日のレシート、会社から遠い観光地の給油、県外の高速の領収書。経費のレシートに日付と場所が入っているので、休日に遠出した跡は帳簿の中に残っています。

三つ目は、車種です。工務店にミニバンがあれば現場用と見ますが、同じ会社に2人乗りのスポーツカーがあれば、何に使っているのかを聞かれます。車種が事業の中身と合っているかどうかです。

四つ目は、車の置き場所です。会社の駐車場ではなく社長の自宅に置いてあり、通勤から休日まで社長が乗っている車は、私用の割合が高いと見られます。車検証の使用の本拠地が自宅住所になっていれば、それも手がかりです。

四つのうち一つで決まるわけではありませんが、二つ三つ重なると、調査官の側で「この車は何割が私用か」という見立てができます。こちらに記録がなければ、その見立てで決まります。

按分で済む場合と、給与と見られる場合

調査の結果には、軽いほうと重いほうがあります。

軽いほうは按分です。事業に使っているのは事実で、ただ私用も混ざっている、という場合は、私用の割合の分だけ経費から外されます。年160万円の経費で私用が5割なら、80万円が否認され、追加の税金は法人税と地方税を合わせて概算で20万〜27万円。調査は3年分を見るので、3年同じ状態なら60万〜80万円に、加算税と延滞税が乗ります。

重いほうは、車そのものが事業に使われていない、と見られる場合です。社長の妻の買い物専用、大学生の息子の通学用、社長の趣味の車。この場合は按分ではなく、車にかかる経費の全額が、社長に対する給与として扱われます。会社の損金にはならず、社長個人には所得税がかかり、会社は源泉所得税を納めていなかったことになる。年160万円なら3年で480万円が給与扱いです。役員への給与は毎月同じ額でないと損金にならないので、この480万円は会社の経費には一切なりません。この仕組みは役員報酬を期の途中で上げたら、税務調査で否認されるの記事に書いています。

按分で済むか、全額が給与になるかの分かれ目は、「事業に使った事実を示せるか」です。少しでも事業に使っていて、それを記録で示せれば按分の話になります。何も示せなければ、全額の話になります。私用が多いこと自体より、記録がないことのほうが、結果を重くします。

高級車は通るのか

「会社で高級車を買うと否認される」と言われることがありますが、車の値段だけで否認されることはありません。事業に使っていれば、1,000万円の車でも経費になります。裁判でも、高級外車を事業で使っていた事実が示されて、経費として認められた例があります。

ただ、高級車は第二節の手がかりに引っかかりやすい、というのは事実です。事業の中身と車種が合っているか、社長の自宅に置いていないか、休日の給油がないか。普通の車なら聞かれないことを、高級車だと聞かれます。聞かれたときに答えられる記録があるかどうかが、普通の車より厳しく問われる、という意味で「通りにくい」のであって、値段で決まるわけではありません。

もう一つ、高級車で見られるのは、社長個人の趣味の車を会社の経費で持っていないか、という点です。会社に1台で、社長が毎日乗っているなら事業用として通ります。会社に普段使いの車が別にあって、週末しか動かない高級車がもう1台ある、という形は、第三節の「重いほう」に寄ります。

残しておくもの|運転記録と社内のルール

社用車の論点で残すべきものは、二つです。

一つ目は、運転の記録です。日付、行き先、目的、走行距離。紙の運転日報でも、スマホのアプリでも、カーナビの履歴でも構いません。毎日つけるのが理想ですが、現実には続かないので、月に数日でもよいから記録を残し、事業に使っている割合の根拠にします。1か月分の記録で事業が7割なら、年間も7割として按分する、という使い方です。

二つ目は、社内のルールです。「社用車の私用は原則禁止」か、「私用は認めるが、私用分は本人が負担する」か、どちらかを決めて文書にしておく。私用を認める場合は、社長が毎月いくらか使用料を会社に払う形にすると、私用の分を会社が負担していないことになり、按分の話がそもそも起きません。月1万〜2万円の使用料を社長が会社に払っている会社は、この論点で困りません。

記録もルールもなく、調査で「何割が事業ですか」と聞かれて初めて考える、というのが一番弱い形です。そのときに出せるのは記憶だけで、記憶は調査官の見立てに勝てません。

顧問税理士が車を買うときに聞くべきこと

会社で車を買うとき、顧問税理士が聞くべきことは三つです。誰が乗るか。何に使うか。どこに置くか。この三つを買う前に聞いていれば、按分の割合も、私用分の扱いも、その時点で決められます。

聞いていない税理士は、車両の購入を固定資産として登録し、減価償却を計算し、ガソリン代を車両費に入力するだけです。それで申告書は作れます。ただ、3年後の調査で「この車は何割が事業ですか」と聞かれたときに、税理士も答えられません。

社用車の私的使用は、社長への貸付金や家族への給与と同じで、「会社のお金が社長個人の側に流れている形」の一つです。どれか一つがある会社は、他もあることが多く、調査官もそう見ます。貸付金については決算書に「社長への貸付金」が膨らんでいるの記事に、家族への給与は妻や子どもに給与を払っているの記事に書きました。調査で見られる全体の流れは税務調査の流れの記事にまとめています。

社用車の扱いを、買う前に決めておきませんか

誰が乗るか、何に使うか、どこに置くかを確認して、按分の割合と私用分の扱い、残す記録の形までお伝えします。今ある車についても、調査で説明できる形に整えます。今の税理士からの引き継ぎは当事務所が行います。

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ミノラス会計事務所 公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太