使っていない会社を放置している|休眠・廃業で無申告のままにすると起きること

「父の会社、もう何年も動いていないんですけど、放っておいて大丈夫なんでしょうか」

70代のお父様と一緒に来られた息子さんの第一声です。お父様が相続の準備を考え始めて、財産を書き出していたところ、昔の会社がそのまま残っていることに気づいた。店を閉めてから7年、申告も登記も何もしていませんでした。

事業をやめたら会社も終わる、と思っている方は少なくありません。実際には、法人は解散と清算の手続きをしない限り、存在し続けます。そして存在している以上、何もしなくても毎年やるべきことが発生し、放置した分だけたまっていきます。

今回は、使っていない会社を放置すると何が起きるのか、どう整理するのかを書きます。群馬県高崎市で会計事務所をやっている立場からの話です。

事業をやめても、会社は残っている

個人事業なら、廃業の届出を出せば事業は終わります。法人は違います。店を閉めても、従業員がいなくなっても、登記簿の上では会社は生きています。終わらせるには、解散の登記をして、財産と負債を整理し、清算が終わった登記をするまでの手続きが必要です。

そして会社が存在している限り、原則として毎期の申告の義務は残ります。売上がゼロでも、事業の実態がなくても、申告書を出す義務そのものは消えません。

「そのうちまた使うかもしれない」「解散の手続きが面倒」という理由で残しておく方が多いのですが、残しておくなら残しておくなりの手続きがあります。何もしないという選択肢は、実は一番高くつきます。

放置している間にたまるもの

使っていない会社を放置すると、次のものが年数分積み上がります。

法人住民税の均等割。利益に関係なくかかる税金で、小さな会社でも年に7万円程度が一般的です。事業をしていないことを県や市町村に届け出ていれば、自治体によってはかからない扱いになることもあります。届け出ていなければ、動いていない会社にも毎年かかり続けます。

申告をしていない期の記録の空白。税額がゼロの期でも、申告書を出していなければ、その期の会社の状態は公式には何も残りません。あとで会社を整理するときに、過去の赤字や資産の状態を証明する材料がなくなります。

青色申告の取消。2期続けて期限までに申告しないと、取消の対象になります。事業を再開するつもりで残しているなら、再開したときに使えるはずだった特典がなくなっています。このあたりは法人の無申告の記事に詳しく書きました。

登記も止まっている

税金とは別に、見落とされやすいのが登記です。

株式会社の取締役には任期があります。任期が来たら、同じ人が続ける場合でも、改めて登記をし直す必要があります。会社を放置している間に任期が切れて、登記をしないまま何年も経っているケースがよくあります。登記を怠った場合、代表者個人に過料が科されることがあります。

さらに、株式会社は最後の登記から12年が経つと、法務局の手続きで解散したものとみなされることがあります。法務局から通知が届き、期限内に届出をしなければ、自動的に解散の登記がされる仕組みです。

みなし解散になれば会社が片付くのではと思われるかもしれませんが、そうではありません。解散したものとみなされても、清算の手続きと、それにともなう申告は残ります。会社の財産や借入金もそのままです。登記簿の上で止まっただけで、中身は何も整理されていません。

社長が亡くなると、会社は家族に残る

使っていない会社を放置していて一番困るのは、実はこの場面です。

社長が亡くなると、社長が持っていた会社の株式は相続財産になります。そして、小さな会社では、社長が自分のお金を会社に貸していることがよくあります。この社長から会社への貸付金も、相続財産です。

問題は、会社がとうに事業をやめていて、そのお金を返す力がない場合です。返ってくる見込みがないお金でも、相続の場面では原則として帳簿の金額で財産として数えられます。実際には1円も入ってこない財産に、相続税がかかることがあります。回収できないことを理由に減らすには、相応の根拠と手続きが必要です。

そして、家族は会社の中身を知りません。何年分の申告が止まっているのか、どこに何があるのか。社長が元気なうちでないと、整理できないことが多いのです。

カフェを閉めて7年、残っていた会社

冒頭のお父様の会社は、市内でカフェを2店舗営んでいた株式会社でした。後継ぎがなく、7年前に2店舗とも閉めた。厨房の機器は居抜きで次のテナントに引き継いでもらい、会社は「何かのときに使えるかもしれない」と残したまま、申告も登記も止めていました。

財産を書き出してみると、次のことが分かりました。

7年分の申告が出ていない。休業の届出もしていない

均等割が未納のまま、7年分で約49万円と延滞金

取締役の任期が切れたまま、登記が止まっている

会社の帳簿上、お父様からの借入金が1,200万円残っている

最後のものが一番の問題でした。2店舗目を出したときの内装と厨房の費用、その後の運転資金として、お父様が何度も個人のお金を入れていた。会社には返す財産がほとんど残っていないのに、お父様の側から見れば1,200万円の貸付金という財産です。このままお父様が亡くなれば、息子さんたちはこの貸付金と会社の株式を相続することになります。

結論として、お父様が元気なうちに会社を清算することにしました。止まっていた直近の申告を整え、役員の登記を直し、解散と清算の手続きに進む。その過程で、会社に残った借入金の扱いも整理します。7年放置した分の手間はかかりましたが、相続が起きてから家族が手をつけるより、はるかに選択肢が残っていました。

選べる道は3つ

使っていない会社の扱いは、次の3つのどれかです。

1. 休業の届出をして残す。税務署と県・市町村に、事業をしていないことを届け出ます。自治体によっては均等割の扱いが変わります。ただし申告の義務や登記の手続きは残るので、「残すための最低限の手入れ」を続けることになります。再開の予定が具体的にある場合に向いています。

2. 解散して清算する。会社を終わらせる手続きです。解散と清算人の登記、債権者への公告、財産と負債の整理、清算結了の登記、そしてそれぞれの段階での申告。実費だけでも登録免許税と官報公告で数万円から10万円程度かかりますが、以後は毎年の負担がなくなります。再開の予定がないなら、基本的にはこちらです。

3. 事業を再開する。別の事業で使う場合です。止まっていた期の申告と登記を整えたうえで、青色申告の承認や銀行口座の状態を確認し直す必要があります。

借入金が多く残っていて、会社の財産で払いきれない場合は、通常の清算とは別の手続きを検討することになります。この判断は個別に見る必要があります。

どの道を選ぶにも、最初にやること

3つのどれを選ぶにしても、出発点は同じです。

会社の現状を書き出すこと。最後に申告したのはいつか。最後に登記したのはいつか。会社名義の預金や車、借入金は何が残っているか。社長個人と会社の間に貸し借りはあるか。登記簿は法務局で誰でも取れますし、通帳と最後の決算書があれば、おおよその姿は見えてきます。

そして、社長が元気なうちに動くこと。会社の中身を知っているのは社長だけです。相続が起きてからでは、家族は資料を探すところから始めることになり、使える方法も限られます。相続全体の準備を考えている方は、相続の専門窓口でも同じ事務所がご相談をお受けしています。

個人の無申告を含めた全体の進め方は無申告のまま何年も経っている場合の手順にまとめてあります。止まっている会社は、止まっている年数が短いほど整理が楽です。

使っていない会社の整理を、申告から登記までお手伝いします

残すか、閉じるか。まず現状を確認して、どちらが負担が軽いかをお出しします。ご家族からのご相談も承っています。費用は料金表を、事務所の考え方はごあいさつをご覧ください。

TEL 027-386-2807(平日9:00〜18:00)

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公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太