「来月から仕事が決まっているので、それまでに会社をつくりたいんです」。設立のご相談で、期限が先に決まっているケースは珍しくありません。先日も、取引先から「法人でないと発注できない」と言われた高崎市内のIT系フリーランスの方が、残り3週間という状態で相談に来られました。
結論から言うと、3週間あれば間に合います。ただし、手順を知らずに進めると、書類の不備ひとつで1週間単位のロスが出ます。この記事では、株式会社を発起設立でつくる場合の流れと必要書類、高崎で設立する場合の現実的なスケジュールを、群馬・高崎の税理士・公認会計士として書きます。
全体の流れとスケジュール感
株式会社の設立は、大きくこの順番で進みます。
1. 基本事項の決定(商号・目的・本店・資本金・役員・決算期)
2. 法人印鑑の作成、個人の印鑑証明書の取得
3. 定款の作成と公証役場での認証
4. 資本金の払込
5. 登記申請(この申請日が会社の設立日)
6. 登記完了後、税務署等への届出と銀行口座開設
期間の目安は、準備開始から登記申請まで1〜2週間、登記完了までさらに1週間前後。全体で2〜3週間が現実的なラインです。急げば登記申請までを1週間弱に圧縮できますが、余裕を持つなら1ヶ月前から動くのが安全です。なお、かかる費用の内訳は会社設立費用はいくらかかる?の記事に書いたので、この記事では手順に絞ります。
ステップ1:基本事項を決める
最初に決めるのは6つ。商号(会社名)、事業目的、本店所在地、資本金の額、役員構成、決算期です。実は設立作業の中で一番時間がかかるのがここで、書類づくり自体は決まってしまえば速い。相談の場でも、この6つを一緒に詰める時間が最も長くなります。
つまずきやすいのは事業目的です。以前、建設業の許可取得を見据えていた方が、自分で用意した定款の目的欄に建設業の記載を入れ忘れていたケースがありました。目的にない事業では許認可が取れないため、後から定款変更と変更登記が必要になり、余計な登録免許税がかかります。将来やる可能性のある事業と、許認可に必要な文言は、最初から入れておくのが鉄則です。
それから商号。ここで長く悩む方が本当に多い。6つの基本事項の中で、体感では一番時間を使うのが会社名です。思い入れがあるのは当然ですし、悩むこと自体は悪くありませんが、設立の期限があるなら「候補を3つに絞って1週間で決める」のように締切を切ることをおすすめしています。実務上の注意もあります。同じ住所に同じ商号の会社は登記できないほか、使える文字にもルールがあります(ローマ字や「&」「・」は可、多くの記号は不可)。また、有名企業と紛らわしい商号は不正競争防止法上のリスクになります。決める前に、国税庁の法人番号公表サイトなどで同名・類似の会社がないか検索しておくと安心です。銀行口座やドメイン取得のことまで考えると、読みやすく検索しやすい商号が結局は使いやすい、というのが実感です。
資本金の額は融資や信用にも関わるので、資本金はいくらにすべきかの記事を参考にしてください。
そして決算期。設立日から1年以内で自由に決められますが、「なんとなく3月」で決めてはいけません。これを知らない人が本当に多いのですが、決算期は消費税の免税期間を最大限取れるように設定すべきです。資本金1,000万円未満などの要件を満たせば、設立からしばらく消費税の納税義務が免除されますが、この免税は「期」を単位に判定されます。だから、設立日から最も遠い月を決算期にして1期目をできるだけ長く取るのが基本形です。例えば7月設立で決算期を翌年6月にすれば1期目は約12ヶ月ですが、9月にしてしまうと1期目はわずか3ヶ月。免税のメリットが大きく削られます。インボイス登録との兼ね合いなど例外もあるので詳しくは別の記事で書きますが、少なくとも「決算期は無料の節税ポイント」だという認識は持っておいてください。あわせて、繁忙期と決算作業が重ならないかも確認しておくと後が楽です。
このタイミングで法人の印鑑(代表者印)を発注し、発起人・取締役になる人の印鑑証明書を取っておきます。高崎市はマイナンバーカードがあればコンビニ交付が使えます。
ステップ2:定款の作成と認証
基本事項が決まったら、定款を作成し、公証役場で認証を受けます。定款は会社のルールブックで、株式会社は公証人の認証がないと効力がありません。高崎市内にも公証役場があるので、群馬県内で完結できます。
実務上のポイントは2つ。1つは、いきなり認証日に行くのではなく、事前に定款案を公証役場に送って内容チェックを受けること。当日に不備が見つかると出直しになります。もう1つは電子定款を使うこと。紙の定款だと収入印紙4万円がかかりますが、電子定款なら不要です。当事務所で支援する場合はすべて電子定款で作成しています。
認証時に必要なのは、定款、発起人全員の印鑑証明書、実質的支配者となるべき者の申告書などです。ここで印鑑証明書の出番が来るので、ステップ1の段階で取っておくと流れが止まりません。
ステップ3:資本金の払込
定款作成後に、発起人個人の銀行口座へ資本金を振り込みます。会社はまだ存在しないので、法人口座ではなく発起人の個人口座を使うのがポイントです。通帳の表紙・口座情報ページ・振込が記帳されたページのコピーが、登記に使う払込証明の材料になります。
ここで多いミスが、払込の日付です。原則として定款作成日より前の入金は払込として認められず、やり直しになることがあります。「口座にもともと残高があるからいいだろう」も不可で、定款作成日以降に、資本金の額をあらためて入金(自分の口座から自分の口座への振込でも可)する必要があります。順番を間違えただけで数日のロスになるので、注意してください。
ステップ4:登記申請(申請先は前橋地方法務局本局)
払込まで済んだら、設立登記を申請します。高崎で設立する場合の申請先は前橋地方法務局の本局です。高崎支局では商業登記を扱っていないので、間違えて高崎支局に持ち込まないでください。オンライン申請・郵送申請も可能です。
主な提出書類は、登記申請書、認証済み定款、発起人の決定書、取締役の就任承諾書、取締役の印鑑証明書、払込を証する書面、印鑑届書、資本金の額の計上に関する証明書など。なお、登記申請の代理は司法書士の業務なので、当事務所では提携司法書士と連携して進めています。
重要なのは、この申請日が会社の設立日になることです。登記が完了した日ではありません。設立日にこだわる方は多く、大安を選びたいという相談は今でもよくいただきます。月初の1日や記念日にしたい場合も含めて、その日に申請できるよう逆算して準備します。1日が土日祝の月は、その月の1日を設立日にできない点も覚えておいてください。
ここで一つ、知られていない小ネタを。設立日を月の2日以降にすると、法人住民税の均等割が微妙に有利になります。均等割は月割で計算され、1ヶ月に満たない端数月は切り捨てられるからです。1日設立ならその月から丸々カウントされますが、2日以降なら初月分が切り捨てになり、年7万円なら約5,800円の差。大きな金額ではありませんが、「1日設立」に特段のこだわりがないなら、2日以降を選んで損はありません。申請から登記完了までは1週間前後です。
登記のあとにやること
登記が完了したら、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)と法人の印鑑証明書が取れるようになります。ここからが後半戦で、税務署・県税事務所・市役所・年金事務所への届出が待っています。特に青色申告承認申請書は期限を逃すと1期目の節税に直結するので、設立とセットで必ず出します。届出の全体像は、近いうちに別の記事でまとめる予定です。
法人の銀行口座も、登記完了後に開設します。冒頭のIT系の方のように取引開始の期限がある場合、ネット銀行は審査が比較的速く、そこから群馬銀行・東和銀行・しののめ信金といった地域の金融機関に広げていくのが高崎での標準的なパターンです。創業融資を考えているなら、口座と融資はセットで設計したほうがいい。このあたりは創業融資はどこで借りるべきかの記事をご覧ください。
ちなみに冒頭の3週間の方は、初回相談の翌週に定款認証、その3日後に登記申請まで進み、期限に間に合いました。手順を知っていれば、設立は怖い作業ではありません。当事務所は起業・創業・会社設立の支援を入口に、法人設立支援で累計70社超をお手伝いしてきました。スケジュールに不安がある方こそ、早めにご相談ください。
会社設立・創業融資のご相談はミノラス会計事務所へ
電話:027-386-2807(平日9:00〜18:00)
住所:群馬県高崎市江木町610-10 ミノラスビル3階
公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太















