「税務署から電話があって、来週調査に来ると言われた。でも、一度も申告していない」
この状態で検索している方が最初に知りたいのは、もう手遅れなのかどうか、だと思います。先に答えを書きます。手遅れではありません。ただ、連絡が来る前に相談に来た場合とは、できることと順番が変わります。
この記事では、調査の連絡が来たあとに何ができて、何ができなくなるのか、調査日までに申告を出すと何が変わるのかを、順番に書きます。
この記事の内容
調査の連絡が来た時点で、隠す選択肢は消えている
税務署が調査の連絡をしてくる会社は、すでに何らかの形で把握されています。申告がないことと、事業をしていることの両方を税務署が知っているから、電話がかかってきます。取引先の調査で支払先として名前が出た、銀行口座の動きから事業収入があると見られた、インボイスの登録だけはしていた、といった経路です。把握の仕組みは無申告はどこから把握されるのかに書いています。
この段階で考えることは「どう隠すか」ではなく「どの順番で出すか」です。連絡が来る前なら、自分から出すか、出さずにいるかという選択がありました。連絡が来たあとは、調査の前に自分で出すか、調査を受けて税務署の指摘で出すか、の二択になります。この二つで、上乗せされる金額が変わります。
調査日は動かせる
税務署からの電話で言われた調査の日付は、確定ではなく提案です。事前に連絡をする調査では、日程は納税者側の都合を聞いたうえで決めることになっています。仕事の都合や、税理士に依頼したので準備の時間がほしいという理由で、1〜2週間ずらしてもらうことは普通に行われています。
税理士が関与する場合は、税理士から税務署に連絡して、関与することになった旨と日程の再調整を伝えます。調査を受ける側が自分で電話して延期を頼むより、税理士が入ったという理由のほうが通りやすい、というのが実感です。
日程を延ばす目的は、調査を逃れることではありません。調査の前に申告書を出すための時間を作ることです。延ばしてもらった分で帳簿を作り、申告を先に出す、という使い方をします。引き延ばすだけで何も出さないのであれば、延期の意味はありません。
調査の前に申告を出すと、加算税の区分が一つ軽くなる
無申告の加算税には、出すタイミングで三つの段階があります。連絡が来る前に自分から出した場合、連絡が来てから調査の前に自分で出した場合、調査を受けて税務署の指摘を受けてから出した場合、の三つです。あとになるほど重くなります。率の説明と全体像は無申告のペナルティ|加算税と延滞税で、実際いくら増えるのかに書いたので、ここでは金額の例だけ書きます。
法人で4期分が無申告、法人税と地方税を合わせた本税が1期あたり120万円、4期合計で480万円だったとします。この本税に対する加算税を、調査前に自分で出した場合と、調査後に指摘されてから出した場合で比べると、概算でこうなります。
・調査の前に申告を出した場合:4期合計で約62万円
・調査を受けて指摘されてから出した場合:4期合計で約86万円
差は約24万円です。連絡が来る前に自分から出していれば、さらに軽い区分だったので、ここまでの金額にはなっていません。それでも、連絡が来たあとでも調査の前に出せば、この例で24万円は変わります。本税が大きければ差も大きくなります。
一つ注意があります。本来の期限から1か月以内に自分から出すと加算税がかからない特例がありますが、これは調査の連絡が来たあとでは使えません。連絡が来た時点で、加算税をゼロにする道はなくなっています。
延滞税は、出すタイミングで区分が変わるものではありません。本来の期限から納めるまでの日数で決まります。早く出して早く納めれば、そこで止まる、というだけです。
調査日までに申告を出せるかは、資料の状態で決まる
調査日まで2〜3週間しかない中で何期分かの申告を出せるかどうかは、資料がどれだけ残っているかで決まります。やることは、帳簿を作る、決算書を作る、申告書を作って出す、の三つで、時間がかかるのは帳簿です。
売上が全部振込で、請求書を自分で発行していて控えがあれば、通帳と請求書の突き合わせで売上は固まります。仕入先が限られていて請求書が残っていれば、経費の大半も固まります。この状態なら、資料をいただいてから1〜2週間で複数期分の申告書を出すことは現実的です。
逆に、現金の売上が多くて記録がない、個人の口座と混ざっている、という状態だと、売上を復元するところから始めることになり、調査日までに間に合わない可能性が出てきます。復元の考え方は帳簿も領収書もない状態から申告できるかに書いています。間に合わない場合は、間に合う期だけ先に出すか、売上だけ固めた概算で出すか、調査で確定させるかを、資料を見て判断します。
調査の連絡が来たら、相談の前に揃えておいていただきたいものは次の四つです。
・事業用の口座の通帳(紛失していれば銀行で取引明細を再発行)
・自分が出した請求書の控え(データで可)
・仕入先・外注先からの請求書
・クレジットカードの利用明細(ウェブで取れる範囲)
領収書のない細かい現金経費は、計上を諦めることが多いです。経費を積み上げて税額を減らすより、調査日までに申告を出して加算税の区分を軽くするほうが、金額として大きいからです。
もう一つ、法人で給与を払っている場合は、源泉所得税を納めているかも確認します。法人税の申告とは別に整理が要る部分で、無申告の会社では源泉もあわせて納めていないことが珍しくなく、調査では必ず見られます。
調査当日、何を見られるか
調査の前に申告を出してあると、調査当日の中身は「出した申告が合っているか」の確認になります。何も出していない状態で調査を受けると、売上がいくらなのかを税務署側が通帳や取引先の資料から積み上げていく作業になり、こちらは受け身で聞かれるだけです。先に出しておくと、こちらが作った数字を土台に話が進みます。この違いは、加算税の区分の差より大きいかもしれません。
無申告の会社の調査で見られるのは、通帳、請求書の控え、仕入先からの請求書、給与の支払記録、それに事業所の中の設備や在庫です。質問は、売上の計上もれがないか、人への支払が給与か外注か、社長個人の支出が経費に混ざっていないか、の三点に集中します。
税理士に依頼している場合は、調査には税理士が同席します。質問に対してその場で税務上の説明ができるのと、後日の資料提出や指摘事項のやり取りを税理士が窓口になって進められるのが、同席の意味です。
連絡が来てからでも変わるもの、変わらないもの
連絡が来てから相談した場合に変わるものは、二つです。一つは加算税の区分で、調査の前に出せば一段軽くなります。もう一つは調査当日の進み方で、こちらの数字を土台にできるか、税務署の積み上げを受け身で聞くかの違いです。
変わらないものも二つあります。本税そのものと、延滞税の仕組みです。本税は売上と経費が同じなら誰がいつ出しても同じ金額です。延滞税は日数で決まるので、出すのが早いほど止まるのが早い、というだけです。
それから、税理士費用の面では、調査日という期限があるぶん、連絡が来る前の相談より高くなります。通常の仕事を止めて集中して進めるからです。費用の決まり方は無申告の税理士費用は何で決まるか|着手金がお見積りの半額になる理由に書きました。
連絡が来てからでも、できることはあります。ただ、できることの幅は、連絡が来る前のほうが広い。封書のお尋ねの段階でできることは税務署からお尋ねが届いた|封書が来た時点で何が起きているかに、何も来ていない段階からの流れは無申告のまま何年も経っている|連絡が来る前に出すかどうかで、ここまで変わるに書いています。電話が来たその日のうちに動けば、調査日までに出せることのほうが多いです。















