相続で見つかった親の無申告|亡くなった人の税金は誰が、いつまでに出すのか

「父の通帳に、毎月決まった現金の入金があるんです。これ、何だと思いますか」

お父様を亡くされたご姉弟から、相続税の申告の準備を進める中でこう聞かれました。通帳を5年分さかのぼると、毎月月初に十数万円の現金が入っている。年金とは別です。話を聞いていくと、自宅の隣の土地で月極駐車場を貸していて、その賃料をお父様が自分で集めて入金していたことが分かりました。確定申告をした形跡はありませんでした。

亡くなった方の無申告が、相続の準備の途中で見つかる。これは珍しいことではありません。そして、見つかった税金は、相続人が引き継ぎます。知らなかったでは済まない一方で、整理の仕方によって負担を軽くできる部分もあります。

今回は、相続で見つかった無申告をどう扱うかを書きます。群馬県高崎市で会計事務所をやっている立場からの話です。

亡くなった人の税金は、相続人が引き継ぐ

亡くなった方が納めるべきだった税金は、相続人が引き継ぎます。預金や不動産と同じように、未納の税金も相続の対象です。相続人が複数いれば、それぞれの相続分に応じて引き継ぐのが原則です。

具体的には、次の2種類の申告が相続人の仕事になります。

亡くなった年の申告。1月1日から亡くなった日までの所得について、相続人が代わりに申告します。準確定申告と呼ばれるものです

過去に出していなかった年の申告。生前に申告すべきだった年の分も、相続人が期限後申告として出すことになります

本人がもういないので、事情を説明できる人がいません。相続人は通帳や契約書から、亡くなった方が何をしていたのかを組み立て直すことになります。

相続の準備で見つかることが多い理由

相続税の申告を準備するときは、亡くなった方の通帳を数年分さかのぼって確認します。財産の漏れがないか、生前に大きなお金の動きがなかったかを見るためです。

この作業の中で、定期的な入金が目に留まります。家賃、駐車場代、講師料、原稿料。年金や給与ではない収入があれば、それが申告されていたかどうかを確認することになります。

大事なのは、税務署も同じ通帳を見るということです。相続税の申告書が出れば、その内容は確認の対象になります。相続税の調査が入れば、同じように過去の通帳を見ます。そこで所得の申告漏れが見つかれば、相続税とは別に指摘されます。

つまり、相続の準備で見つけたものは、自分たちで先に整理しておいたほうがいいということです。黙って相続税の申告だけを出しても、同じ通帳から同じものが見つかります。見つかる経路の考え方は無申告がどこから把握されるかに書きました。

年金暮らしでも申告が必要だった

冒頭のお父様は、年金で暮らしていました。「年金だけなら確定申告はいらない」という話を聞いていて、自分もそうだと思っていたようです。

確かに、公的年金の収入が一定額以下で、年金以外の所得が20万円以下であれば、所得税の確定申告をしなくてよい仕組みがあります。ところが、この「年金以外の所得」に駐車場の賃料が入ります。駐車場の所得が20万円を超えていれば、年金がいくらであっても申告が必要です。

高齢の方の無申告は、このパターンがとても多いです。年金暮らしのつもりで、実は別の収入があった。土地を貸している、アパートの一室を貸している、昔の仕事の顧問料が入っている。本人は「小遣い程度」と思っていても、年間で見ると20万円を超えていることがよくあります。

月極駐車場の賃料、5年分

お父様の駐車場は20台分。1台あたり月8,000円で、年間の賃料は192万円でした。借り手の多くは近所の方で、毎月現金で受け取って、お父様が自分で銀行に入れていた。契約書は手書きのものが何枚か残っているだけでした。

固定資産税や舗装の費用、区画の線の引き直しなどを経費として拾うと、駐車場の所得は年162万円ほどになります。年金以外の所得20万円を大きく超えているので、申告は必要でした。

さかのぼって出すことにした5年分で、所得税と住民税を合わせて約127万円。これに加えて、亡くなった年の準確定申告があります。お父様の後期高齢者医療の保険料も、所得が変わる分だけ計算し直しになります。

ご姉弟にとっては、相続の手続きの途中で予想していなかった負担が出てきた形です。ただ、自分たちで見つけて、自分たちから出したことで、税務署から指摘されてから出すより上乗せは軽く済んでいます。この差は加算税と延滞税でいくら増えるかに整理してあります。

見つかった税金は、相続税の計算で差し引ける

ここは、相続人にとって少し救いのある話です。

亡くなった方が納めるべきだった税金は、亡くなった方の借金と同じ扱いになります。相続税を計算するとき、財産から差し引くことができます。今回の約127万円も、相続税の計算上は財産からマイナスされます。

このご家族の場合、相続税がかかる規模の財産があったので、差し引いた分だけ相続税も下がりました。所得税の申告を先に整理したことで、相続税の申告書がより正確になったとも言えます。逆に、所得の申告を放置したまま相続税だけを出すと、あとで両方を直すことになります。

ただし、上乗せされる加算税や延滞税の一部は、相続人の側の事情で生じたものとして差し引けないことがあります。どこまで差し引けるかは、発生した時期と理由によって変わります。

期限が3つ重なる

相続で無申告が見つかったとき、気をつけたいのは期限です。亡くなったことを知った日から数えて、次の3つが重なります。

3か月 相続を放棄するかどうかを決める期限

4か月 亡くなった年の準確定申告の期限

10か月 相続税の申告と納付の期限

一番早いのが相続放棄の判断です。放棄すれば、未納の税金も引き継ぎません。亡くなった方の財産より、未納の税金や借金のほうが大きいと分かった場合は、ここが大事な分かれ目になります。ところが、通帳を5年分確認して無申告に気づくころには、3か月が過ぎていることが少なくありません。

なので、亡くなってからなるべく早い段階で、通帳の定期的な入金だけでも確認しておくことをおすすめします。詳しい計算は後回しでも、無申告の可能性があるかどうかが分かれば、放棄の判断に間に合います。

引き継いだ側が、次から気をつけること

冒頭のご家族では、駐車場の土地は長男の方が相続しました。ここで大事なのは、今度は長男の方が、その賃料を申告する立場になったということです。

給与所得者の方が賃料収入を相続した場合、その所得が20万円を超えれば確定申告が必要です。お父様と同じことを繰り返さないよう、借り手との契約を書面で結び直し、賃料は口座振込に切り替えました。現金の集金をやめるだけで、記録は自然に残ります。

使っていない会社が残っていた場合の整理は、休眠会社と廃業の無申告の記事に書きました。相続税の申告そのものについては、相続の専門窓口で同じ事務所がご相談をお受けしています。所得税と相続税を同じところで見れば、差し引きの計算まで一度に整理できます。

亡くなった方の通帳に、気になる入金はありませんか

準確定申告と過去の申告、相続税の申告まで、まとめて整理します。期限が近い場合はお早めにご連絡ください。費用は料金表を、事務所の考え方はごあいさつをご覧ください。

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公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太