「罰金って、いくらくらいかかるんですか」
無申告のご相談で、必ず出る質問です。ここが分からないから動けない、という方がほとんどなので、今回は金額の話だけをします。
先に整理しておくと、無申告に対する上乗せは罰金ではなく、性質の違う2種類です。ひとつは申告しなかったことに対するもの、もうひとつは納めるのが遅れたことに対するもの。この2つは計算の仕方がまったく違います。
そして、片方は「いつ出したか」で3倍以上動き、もう片方は放置した年数ほどには増えません。ここを分けて理解しておくと、見通しが立てやすくなります。群馬県高崎市で会計事務所をやっている立場からの話です。
目次
上乗せは2種類ある
まず、本来納めるべき税額そのもの(本税)があります。これは上乗せではなく、もともと払うはずだったお金です。無申告であっても減りません。
その上に乗るのが次の2つです。
無申告加算税 期限までに申告しなかったことに対するもの。本税に一定の率を掛けて計算します
延滞税 納付が遅れた期間に対するもの。利息に近い性質で、日数で計算します
よくある誤解が、「5年放置したから5年分の延滞税が丸ごと乗る」というものです。実際にはそうならない仕組みがあります。後述します。
逆に、無申告加算税のほうは放置した年数ではなく、どの段階で申告したかで決まります。ここが自分でコントロールできる唯一の部分です。
無申告加算税は、いつ出したかで率が変わる
段階は大きく3つです。
1. 税務署から調査の連絡が来る前に、自分から申告した場合。一番軽い率になります。ここに入れるかどうかが最大の分かれ目です。
2. 調査の連絡は来たが、指摘される前に自分から申告した場合。中間の率です。連絡が来た時点でもまだ間に合う、というのはこの段階を指しています。
3. 調査で指摘されてから申告した場合。原則の率が適用されます。本税の金額が大きくなるほど率も上がる構造になっているので、規模が大きい方ほど差が開きます。
さらに、過去にも無申告で加算税を課されたことがある場合は、率が上乗せされます。一度目より二度目のほうが重い。繰り返しを防ぐための仕組みです。
なお、期限を過ぎた直後に自分から申告し、納付もすぐ済ませた場合など、一定の条件を満たすと無申告加算税がかからないこともあります。「1日遅れただけ」というケースはこちらに当たる可能性があるので、諦めずに確認してください。
隠していたと判断されると、枠そのものが変わる
ここまでは「出していなかった」場合の話です。意図的に隠していたと判断されると、無申告加算税ではなく重加算税という別の枠になります。率は一段と重くなります。
どういうときにそうなるか。売上を意識的に除いていた、帳簿や請求書を作り替えた、他人名義の口座で受け取っていた、といったケースです。逆に、忙しくて手が回らなかった、制度を知らなかった、というのはここに入りません。
この線引きは、金額以上に大きな差を生みます。税理士に相談するときに隠さず全部出してほしいとお伝えしているのは、ここに引っかからないようにするためでもあります。あとから出てくると、経緯の説明が難しくなります。
延滞税は、放置した年数分そのままかかるわけではない
相談の場で説明すると、ほとんどの方が意外そうな顔をされる部分です。
延滞税には低い率と高い率の2段階があり、高いほうに切り替わるのは納期限から一定期間が過ぎてからです。そして期限後申告の場合、納期限は申告書を出した日になります。つまり、提出するまでの長い期間は、低いほうの率で計算されることになります。
さらに、期限から1年以上経ってから申告した場合、途中の期間が計算から除かれる仕組みがあります。5年放置していても、延滞税の計算対象が5年分まるごとにはならない、ということです。
ただし例外があります。意図的に隠していたと判断される場合、この除かれる仕組みは使えません。重加算税の枠に入ると、加算税が重くなるだけでなく、延滞税も長い期間分かかることになります。二重に効いてきます。
延滞税の率は年によって変わるので、具体的な数字はそのつど確認が必要です。ただ、性質として「利息のようなもの」であり、加算税ほど桁が跳ねるものではない、という理解で大きく外れません。
本税300万円で、4通り並べてみる
数年分をまとめて申告した結果、本税が300万円になったとします。加算税だけを並べると、こうなります。
自分から申告(連絡が来る前) 15万円
連絡は来たが、指摘前に申告 42万5,000円
調査で指摘されてから申告 57万5,000円
隠していたと判断された場合 120万円
一番上と一番下で105万円の差です。本税はどれも同じ300万円。提出する書類の中身も、ほとんど変わりません。違うのは、いつ出したかと、隠していたかどうかだけです。
一番上と三番目の差だけを見ても42万5,000円あります。これは「税務署から連絡が来る前に動いたかどうか」という一点で生じている差です。封書が届いた時点でもまだ二番目には入れますが、放置すれば三番目に落ちます。
加算税より重くなることがある、それ以外の負担
見積もりのときに一番ずれるのが、ここです。
住民税。所得税の申告内容が市町村に回り、その年分の住民税が課されます。数年分がまとめて来ます
国民健康保険料。所得が確定すると保険料も計算し直されます。金額が大きくなりやすい項目です
地方税の延滞金。住民税にも、遅れた分の上乗せがあります
消費税。課税事業者に当たっていた場合、所得税とは別に発生します。帳簿が残っていないと差し引ける分が少なくなります
所得税と加算税だけを想定して資金を用意し、あとから住民税と国保の通知が来て足りなくなる、というのがよくある失敗です。最初に全部並べてから納付計画を組んでください。一括が難しい場合の相談制度もありますが、申請には期限と条件があります。
金額以外の影響もあります。申告書がないと融資は受けられませんし、許認可の更新で決算書を求められる業種もあります。青色申告に切り替える場合も、期限内申告が条件の控除が多いので、無申告の年は全部落ちています。
早く出すほど安い、の中身
「早く動いたほうがいい」とよく言われますが、中身は2つだけです。
ひとつは、加算税の段階を落とさないこと。連絡が来る前なら一番軽い率です。これは日数ではなく段階の問題なので、明日出しても半年後に出しても、連絡が来る前なら同じです。逆に言えば、連絡が来た瞬間に一段階落ちます。
もうひとつは、延滞税を止めること。こちらは日数で増えるので、納付するまで動き続けます。
つまり、焦って雑な申告書を出す必要はありませんが、連絡が来る前に手続きを始めておく意味は大きいということです。何年分あるか数えるところからで構いません。進め方は無申告のまま何年も経っている場合の手順にまとめてあります。
金額を知らないまま悩んでいる時間が、一番高くつきます。















