外注費と給与の区分|建設業で最も指摘される論点

「うちは職人さんに外注費で払っています。みんな一人親方なので、問題ないですよね」

建設業の社長から、何度も聞いた言葉です。そして税務調査でいちばん多く指摘されるのが、この外注費と給与の区分です。

先に結論を書くと、一人親方かどうかは判定の材料のひとつでしかありません。相手が個人事業として開業届を出していても、実態が雇用に近ければ給与とされます。会社と職人の間でどう呼んでいるかは、判定に関係ありません。

そして、ここを否認されると動く税金が3つあります。金額が大きくなりやすいのはそのためです。公認会計士・税理士の長島祐太が、何を見られて、どこで線が引かれるのかを書きます。

否認されると3つの税金が動く

外注費が給与だと認定されると、次の3つが同時に発生します。

・消費税。給与は課税仕入れにならないので、控除していた分が否認されます

・源泉所得税。給与なら会社に源泉徴収の義務があるので、徴収していなかった分を納めることになります

・加算税と延滞税。源泉の納付漏れには不納付加算税が10%かかります

法人税だけは、外注費でも給与でも損金であることに変わりがないので、原則として動きません。ここが誤解されやすいところです。「経費であることは認められているのだから大した話ではない」と考えていると、消費税と源泉で想定外の金額が出ます。

しかも調査の対象期間は3期分です。同じ運用を何年も続けている会社ほど、金額が積み上がります。

国税庁が示している5つの判定基準

国税庁は平成21年に、大工・左官・とび職などが受ける報酬について、事業所得と給与所得のどちらになるかの判断基準を示しています。次の5つです。

・他人が代わりに業務を行うことが認められているか

・作業時間を指定される、報酬が作業時間を基礎に計算されるなど、時間的な拘束を受けるか

・作業の具体的な内容や方法について、支払者から指揮監督を受けるか

・引渡し前の完成品が不可抗力で滅失した場合に、それまでの分の報酬を自らの権利として請求できるか

・材料や用具を支払者から供与されているか

この5つのうち1つに当てはまったら即アウト、という単純なものではありません。契約の形式ではなく実態で、総合的に判断すると書かれています。示されている職種は大工・左官・とび職ですが、実務では建設工事に従事する個人への支払い全般で、この5つが基準として使われます。

ただ、実務で見ていると、時間的拘束と用具の供与の2つが重いです。日当で払っていて、道具も会社のものを使っている職人は、他の要素がどうであれ厳しくなります。

調査官が実際に開く資料

判定基準は抽象的ですが、調査で見られるものは具体的です。

まず請求書です。誰が作っているかを見られます。会社が用意した用紙に金額を書いて職人に渡している、書式が全員同じ、筆跡が同じ、そもそも請求書がなく会社の支払明細だけで処理している。こうなっていると、独立した事業者からの請求とは見られません。

次に単価の建て方です。「1日いくら」で払っていれば時間的拘束の証拠になります。「この工事一式でいくら」なら請負に近づきます。日報や出面帳に出勤日数が記録されていて、それに日当を掛けた金額が支払額と一致していると、給与の計算そのものです。

道具と材料も見られます。会社の機械を使い、会社の車で現場に行き、材料も会社が用意している。これで外注だと言うのは無理があります。重機を扱う工事では、機械を誰が持っているかが特にはっきり出ます。

それから、他の会社の現場に行けるかどうか。特定の会社の仕事だけで年間が埋まっていて、他所の仕事を受ける余地がない状態は、専属性が高いと見られます。作業服や安全帯を会社が支給しているかも聞かれます。

道路工事の会社で700万円を超えた例

道路工事の会社です。舗装と区画線、道路の維持補修をやっています。社員3名のほかに、一人親方に6名入ってもらっていました。外注費は年4,800万円ほどです。

6名のうち3名は、いわゆる常用でした。毎朝会社に集まって社用車で現場に向かい、日当2万2,000円で出面に応じて支払っています。転圧機もカッターも会社の機械です。残りの3名は、自分のダンプや小型重機を持ち込んで現場に直行し、工区ごとに金額を決めて請求書を出していました。

調査で指摘されたのは、常用の3名分だけです。年間で1,650万円、3期分で4,950万円ありました。

消費税は、1,650万円に対して10÷110を掛けた150万円が1年分の控除否認額です。3期分で450万円。これに源泉所得税の徴収漏れと不納付加算税10%、延滞税が加わって、総額は700万円を超えました。

社長からは「同じ現場に出ているのに、なぜ3人だけなのか」と聞かれました。答えは、残りの3名は自分の重機を持ち込んで、工区単位で請求していたからです。同じ会社の中に両方の形が混ざっていたことが、かえって線を引きやすくしていました。調査官から見れば、比べる対象が社内にあったわけです。

この会社はその後、常用の3名を社員として雇用に切り替えています。社会保険料の会社負担は増えましたが、毎年この不安を抱えるよりはいい、という判断でした。公共工事の入札で社会保険の加入状況を見られることも、判断を後押ししました。

インボイス後、外注費の有利さは薄れている

そもそも、なぜ外注費にしたがるのか。理由は消費税と社会保険です。外注費なら消費税の控除が取れて、社会保険の会社負担もかからない。この2つが動機でした。

ただ、消費税のほうの前提はインボイス制度で変わりました。相手が免税事業者のままなら、支払った金額の全額を控除することはできません。経過措置で一定割合だけが認められる形になっていて、その割合は段階的に下がっていきます。2026年10月からは70%、2028年10月からは50%です。

つまり、免税事業者の一人親方に外注費で払っている限り、消費税の面での有利さはもう完全ではありません。ここを踏まえずに昔のままの運用を続けていると、リスクだけが残ります。

外注として通すために整えること

外注のままでいくなら、実態のほうを外注に寄せる必要があります。書類だけ整えても、日報と支払額が一致していれば見抜かれます。

・工事ごとの請負契約書か注文書・請書を交わす

・請求書は本人に作ってもらう。会社の書式を配らない

・単価を日当ではなく、工事単位や出来高で決める

・道具や機械は本人のものを使ってもらう。会社が貸すなら賃借の形にする

・材料を会社が出すなら、その分を請負金額から差し引く

・作業時間を指定しない。工程の期限を伝える形にする

これが現場の実情に合わないなら、雇用に切り替えたほうが安全です。常用で毎日来てもらっている職人を、書類だけで外注に見せるのは無理があります。

判断が難しいのは、常用と請負が混ざっている会社です。線をどこに引くかは個別の事情で変わるので、いまの支払い方を一度並べて見てもらってください。同じ会社の中に両方の形があること自体は問題ではありません。危ないのは、区別せずに全部を外注費で処理していることです。

この論点は、決算書の数字にも表れます。外注費の比率が同業に比べて高い会社は、それだけで確認の対象になりやすい。どういう決算書が目に付くのかは税務調査が来やすい会社の特徴に書きました。

実際に通知が来てからの流れは税務調査の流れ|通知から当日、結果が出るまでにまとめてあります。この論点は事前の準備で説明のしかたが変わる部分なので、通知が来た時点で顧問税理士と詰めておいてください。

いまの支払い方が外注として通るか確認したい方へ

ミノラス会計事務所では、職人ごとの支払明細と請求書、日報の作り方を見せていただいて、どこが給与と見られやすいかを整理してお伝えしています。全部を外注のままにするのか、一部を雇用に切り替えるのか、社会保険の負担も含めて並べて比べます。

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公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太