税務調査の流れ|通知から当日、結果が出るまで

「昨日、税務署から電話がありまして。調査に入りたいと言われたんですが、これは何か疑われているということですか」

高崎市内で建設業を営む会社の社長から、6月に受けた電話です。設立12年、社員18名、売上3億円ほどの会社で、税務調査は初めてでした。声が固くなっていたのを覚えています。

最初に伝えたのは、事前通知の電話が来た時点では何も疑われていない、ということです。不正が見つかった会社に来るのではなく、まだ何も分かっていないから来ます。実際その会社は、2日間の調査を終えて修正申告1本で終わっています。

怖いのは調査そのものではなく、何が起きるか分からないことです。通知から終わるまでの流れが分かっていれば、準備できることと、準備しても意味がないことの区別がつきます。公認会計士・税理士の長島祐太が、通知の電話から結果が出るまでを順番に書きます。

事前通知の電話で何を言われるか

法人の税務調査は、原則として事前通知から始まります。ある日いきなり調査官が来るわけではありません。電話で伝えられるのは法律で決まっていて、主なものは次のとおりです。

・実地の調査を行うということ

・開始する日時と場所

・調査の目的

・対象になる税目(法人税・消費税・源泉所得税など)

・対象になる期間(多くは直近3期分)

・用意しておく帳簿書類

・担当する調査官の氏名と所属

税務代理権限証書が出ていて、事前通知を税理士に対して行うことに同意していれば、この電話は税理士のほうに入ります。社長が直接受けることになったなら、その場で日程を確定させず「顧問税理士と調整して折り返します」で構いません。

日程は変更できます。決算期の直後、繁忙期、社長の出張が入っている時期であれば、理由を伝えて動かしてもらえます。無理に合わせて準備不足で迎えるより、2週間後ろにずらしたほうが結果はよくなります。

なお、現金商売など一部の業種では事前通知なしで来ることもあります。ただしこれは例外で、通常の法人には通知があります。

通知から当日までの1か月でやること

通知から実地調査までは、だいたい3週間から1か月あります。この期間が実は一番大事です。指摘されそうな箇所を先に見つけておけるからです。

用意するのは、対象期間3期分の総勘定元帳、請求書と領収書の綴り、預金通帳の原本、契約書、給与関係の書類、在庫の棚卸表、それに議事録です。すべて原本で、年度ごとに箱にまとめておきます。

そのうえで、私は顧問先と一緒に3点を確認します。ひとつは期末前後1か月の売上と仕入で、計上時期がずれていないか。ひとつは外注費として払っているお金の相手先と契約形態。もうひとつは、社長個人の支出が経費に混ざっていないかです。この3つで指摘の大半が説明できます。

見つかったものを隠す必要はありません。むしろ、調査が始まる前に自主的に修正申告を出せば、加算税の扱いが軽くなります。調査の通知を受けた後でも、指摘される前に自分から出せば過少申告加算税は5%で済みます。指摘されてからだと10%です。

調査1日目は帳簿を見ていない

中小企業の調査は2日間が標準です。1日目の午前中は、ほぼ社長への聞き取りに使われます。

聞かれるのは、会社の沿革、何を作って誰に売っているか、主な取引先、従業員の人数と仕事の内容、社長の1日の動き、趣味や家族構成まで及ぶこともあります。雑談のように進みますが、これは帳簿を読むための下地作りです。あとで数字を見たときに、話と合わない部分を探すためのものだと思ってください。

だから、この午前中に話を盛る必要はありませんし、逆に構えて黙る必要もありません。事実をそのまま話すのが一番安全です。私は社長には「知らないことは知らないと言ってください。あとで確認して回答します、で構いません」と伝えています。推測で答えて、後から違ったというのが一番面倒になります。

午後からは事務所の中や倉庫、資材置き場を見て回り、そのあと帳簿に入ります。社長が拘束されるのは実質1日目の午前だけで、午後以降は現場に出てもらって構いません。昼食を用意する必要はありません。調査官は受け取れない決まりになっています。

2日目に帳簿のどこを開かれるか

2日目は朝から帳簿と証憑です。会社の規模や業種によって重点は変わりますが、開かれる場所はだいたい決まっています。

・期末前後の売上と仕入の計上時期

・外注費として処理しているものが給与に当たらないか

・交際費と会議費、福利厚生費の区分

・未成工事支出金や棚卸資産の残高

・役員報酬と、役員への貸付金の動き

・現金出納帳の残高と実際の現金

見られるのは紙だけではありません。預金通帳は原本を求められますし、会社のパソコンの中身、受発注のメール、日報や作業予定表といった帳簿以外の資料も対象になります。請求書の日付と作業日報の日付が合わない、という形で期ズレが出てくることは多いです。

ここで大事なのは、聞かれた資料をその場で全部出す必要はないということです。「探して明日までに出します」で問題ありません。慌てて別の書類を渡してしまうほうがよくないです。

調査官が帰ったあとが長い

実地調査が2日で終わっても、調査自体はそこで終わりません。ここを知らない社長が多いです。

2日目のあと、追加資料の依頼が電話やメールで何度か来ます。取引先への確認(反面調査)が入ることもあります。そのやり取りが1か月から2か月続き、そのあとで調査結果の説明があります。通知から全部終わるまで、3か月から半年みておくのが現実的です。

結果は3つに分かれます。

・申告是認。直すところがないという結論で、書面が交付されます

・修正申告の勧奨。指摘を受け入れて、会社側から修正申告を出します

・更正処分。指摘に納得できず修正申告を出さない場合に、税務署側が処分します

実務では修正申告がほとんどです。ただし、修正申告を出すと、その内容について不服申立てはできなくなります。これは勧奨のときに書面で説明される決まりになっています。納得していないのに「早く終わらせたいから」で出すと、後戻りできません。指摘の根拠が説明されていないと感じたら、その場で判を押さないでください。

修正申告をすると、本税に加えて過少申告加算税と延滞税がかかります。意図的に隠したと判断されると重加算税35%になり、金額が跳ね上がるうえ、次の調査までの間隔も短くなります。単純なミスと隠蔽の間に線を引く作業が、実は調査の後半戦の中身です。

建設業の会社に2日間入った例

冒頭の会社の話に戻ります。3月決算で、6月に事前通知の電話があり、7月上旬に2日間の実地調査でした。対象は3期分、法人税と消費税と源泉所得税です。

通知から3週間で準備しました。私が引っかかったのは期末の売上です。この会社は月末締めの翌月請求ですが、3月中に引渡しが終わっている工事の一部を、請求書の発行が4月になったという理由で4月の売上に計上していました。完了報告書と請求書を突き合わせて、最終期で480万円の完成工事高が翌期にずれているのが分かりました。

調査当日、この点は初日の午後には見つかっていました。ただ、こちらが工事ごとの引渡日と請求日の対応表を先に作ってあったので、話は「なぜずれたのか」ではなく「いつからその運用なのか」に進みました。売上を減らす意図がなく、年度末に工期が集中して請求書の発行が追いついていなかっただけだと説明でき、重加算税の話にはなりませんでした。

結果は修正申告です。480万円に対する法人税等が約144万円、過少申告加算税が約14万円、これに延滞税が加わりました。ただし期ズレなので、この480万円は翌期の売上から抜けます。つまり本税は前倒しで払っただけで、最終的に会社が失ったのは加算税と延滞税の部分です。

修正申告を出したのは9月末でした。6月の電話から4か月かかっています。社長には「2日で終わると思っていた」と言われましたが、これが普通の長さです。

この会社はその後、工事の完了報告を現場から経理に回す締めのルールを変えました。調査で本当に価値があったのはそこだと思っています。

調査で分かるのは、税理士が説明できるかどうか

調査の結果を分けるのは、処理が完璧かどうかではありません。指摘された処理について、なぜそうしたのかを説明できるかどうかです。

説明できる状態は、調査の当日に作れるものではありません。日頃から帳簿の中身を分かっている人が横にいるかどうかで決まります。年に一度、決算のときだけ資料を受け取っている事務所は、期中の判断の経緯を持っていません。調査の場で「社長、これはどういう処理でしたか」と会社に振り返ってしまう税理士は、実際にいます。

私は監査法人で上場会社の監査に携わっていたので、資料で説明を組み立てる作業には慣れています。ただ、それも期中の数字を見ていなければ成り立ちません。調査は、顧問契約が機能しているかどうかが一番はっきり出る場面です。

調査が終わったあとに顧問を見直す会社は多いです。もし今、質問への返事が遅い、決算の説明がないという状態なら、その延長線上に調査が来ます。日頃の状態がどう影響するかは税理士から連絡が来ない・返事が遅い|放置されている会社に起きることに書きました。

なお、調査の通知が来ている最中の税理士変更はおすすめしません。経緯を知らない人が立ち会うことになるからです。変えるなら調査が終わってから、次の決算の後がいいです。切り替える時期の考え方は税理士を変えるベストタイミング|決算後がいい理由と期中変更のリスクにまとめてあります。

調査のあとに顧問税理士を見直したい方へ

ミノラス会計事務所では、調査で指摘を受けた論点をうかがったうえで、それが期中の関与の薄さから来ているのか、処理そのものの問題なのかを整理してお伝えしています。同じ指摘を次の調査で繰り返さないための体制づくりが本題です。

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公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太