公庫と保証協会付き制度融資の違い|群馬での使い分け【群馬・高崎】

「公庫がいいと聞いたんですが、銀行でも創業融資は借りられるんですよね」

高崎で創業相談を受けていると、資金の話が具体的になった段階で、ほぼ必ずこの質問が出ます。日本政策金融公庫と、群馬県の制度融資。どちらも名前は聞いたことがある。でも何がどう違うのか分からない。そういう方がほとんどです。

違いを金利だと思っている方が多いのですが、実務でいちばん効いてくるのはそこではありません。誰が審査して、誰がリスクを負い、借りたあとにどこと付き合っていくことになるのか。この3点が決定的に違います。そして高崎市で創業する場合、市の補助制度が入ることで金利の差そのものがほとんど消えます。金利で選ぶと、判断を間違えます。

この記事では、公庫と群馬県の制度融資を実際の条件で並べたうえで、高崎で創業する方がどう使い分けるべきかを書きます。

公庫と制度融資は「誰が貸すか」が違う

まず構造から押さえてください。ここを混同したまま比較しても意味がありません。

公庫は、国の金融機関が自分で貸す

日本政策金融公庫は国が全額出資している政策金融機関です。創業者向けの中心的な制度が「新規開業・スタートアップ支援資金」で、公庫が自ら審査し、自らお金を出します。間に誰も入りません。

高崎で創業する方の窓口は公庫高崎支店です。申込書と創業計画書を出し、担当者との面談を経て、可否が決まります。判断するのは公庫だけです。

制度融資は、県・金融機関・保証協会の三者で成り立つ

一方、群馬県の制度融資は仕組みがまったく違います。お金を出すのは群馬銀行や東和銀行、しののめ信用金庫といった民間の金融機関です。県は制度の枠組みと利率を決め、群馬県信用保証協会が保証を付けます。この三者が協調して成り立っている制度です。

創業者向けの枠が「創業者・再チャレンジ支援資金」です。申込みは金融機関の窓口で行います。そして審査は二段階になります。金融機関が貸せるかを見て、保証協会が保証を付けられるかを見る。どちらか一方が首を縦に振らなければ実行されません。

「銀行に相談したら保証協会に回された」という話を聞くことがありますが、回されたのではなく、制度上そういう順番になっているだけです。

条件を並べて比べる|限度額・期間・利率

公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」

・融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)

・返済期間 運転資金10年以内、据置期間5年以内

・原則として無担保・無保証人

・自己資金要件は2024年の制度改正で撤廃

利率は変動します。無担保で税務申告を2期終えていない方の基準利率は、直近では年3%台が中心です。ここに創業支援貸付利率特例制度による0.65%の引下げが乗り、女性・35歳未満・55歳以上の方などは特別利率の対象になります。条件が重なれば年2%台まで下がります。申込みの時点で自分がどの区分に当たるかを主張しないと、基準利率のまま実行されることがあります。

群馬県「創業者・再チャレンジ支援資金」

こちらはA・B・C・Dの4タイプに分かれています。創業前の方が使うのは、原則としてBタイプかDタイプです。Aタイプは創業後5年未満の方が対象で、創業前の方は使えません。

・融資限度額 Aタイプ4,500万円(うち運転資金2,500万円)、B・C・Dタイプ3,500万円

・返済期間 設備・運転とも10年以内

・融資利率 責任共有制度対象は年1.85%以内、対象外は年1.8%以内(令和8年4月1日時点)

・信用保証協会の保証が必須

B-2タイプは保証協会または認定経営革新等支援機関の支援を受けて創業する方が対象で、信用保証料が0.2%引き下げられます。女性・34歳以下・55歳以上の方はB-3タイプとなり、引下げ幅が0.25%になります。認定経営革新等支援機関には税理士事務所も含まれます。当事務所も認定を受けています。

Dタイプはスタートアップ創出促進保証を使う枠で、経営者保証が不要になります。ただし税務申告1期未終了の方は、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を持っていることが要件です。ここだけは自己資金要件が残っています。

金利だけ見ると制度融資が低い。ただし保証料が乗る

数字を並べると、年1.85%以内の制度融資のほうが明らかに低く見えます。ここで見落としてはいけないのが信用保証料です。群馬県信用保証協会の保証料率は通常おおむね年0.45%から1.9%の間で、決算実績のない創業者は中位の区分になることが多くなります。

保証料は融資実行時に一括で支払うのが原則です。1,000万円を7年で借りれば、料率次第で数十万円になります。この分を金利に置き直して考えると、制度融資と公庫の実質負担はかなり近づきます。

高崎市で創業するなら、金利差はほぼ消える

ここからが高崎で創業する方にとって本題です。

高崎市には「創業者融資保証料補助金及び利子補給金」という制度があります。内容は、信用保証協会に支払った保証料の全額補助と、融資を受けた日から5年間の利子の全額補給です。一部ではなく、全額です。

そして対象になる融資制度に、高崎市創業支援資金と群馬県創業者・再チャレンジ支援資金だけでなく、政府系金融機関が実施する融資制度が含まれています。公庫もここに入ります。

つまり高崎市内で創業して要件を満たせば、公庫で借りても制度融資で借りても、最初の5年間の利子は市が負担します。制度融資を選べば、それに加えて保証料も市が負担します。先ほどまで比較していた金利差と保証料の話は、この時点でほとんど意味を失います。

要件は次のとおりです。

・過去に事業歴がなく、融資を受けた時点で創業前または創業後1年未満であること

・高崎市内に新たに主たる事業所(法人は本店も)を設置し、市内で引き続き事業を営むこと

・許認可が必要な事業は、登録・届出等を済ませていること

・市町村税を完納していること

気をつけていただきたいのは手続きの期限です。交付認定申請書は、対象となる融資を受けた日から1か月以内に提出しなければなりません。融資が実行されて、資金繰りと開業準備に追われているまさにその時期です。ここを逃すと5年分の利子がそのまま自己負担になります。

私が創業融資のご相談を受けるとき、融資が決まった段階で必ずこの申請の話をするのはそのためです。窓口は高崎市役所13階の商工振興課金融担当(027-321-1258)です。

実務で効いてくる違いは3つ

金利で差がつかないなら、何で選ぶのか。私が相談者に説明しているのは次の3点です。

1.スピード

公庫は判断する主体がひとつなので、申込みから実行まで、書類が整っていればおおむね1か月前後で進みます。制度融資は金融機関の審査と保証協会の審査を順に通すため、どうしても時間がかかります。

店舗の契約日が決まっている、設備の納期が迫っている。こういう案件で制度融資から入ると、間に合わないことがあります。開業日が動かせないなら公庫が先です。

2.借りたあとに残る「取引関係」

これが長期的にはいちばん大きい差です。

公庫から借りても、民間の金融機関との取引は始まりません。公庫は創業期を支える機関であって、その後の運転資金や設備投資を継続的に見てくれる相手ではないからです。一方、制度融資で借りれば、その日から群馬銀行なり東和銀行なりしののめ信用金庫なりとの取引が始まります。決算書を毎期持っていく相手ができ、2期目以降の追加融資や、将来の保証協会を使わないプロパー融資の入口になります。

創業から3年、5年と経ったときに資金調達で困らないのは、この関係を早い段階でつくった会社です。

3.自己資金と経営者保証の扱い

公庫は制度上の自己資金要件を撤廃しました。ただし審査で自己資金を見ないという意味ではありません。公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業費用の平均が975万円、自己資金の平均が279万円、資金調達額に占める自己資金の割合は平均22.9%でした。実際に借りている人はこれくらい用意しています。

制度融資のDタイプは経営者保証が不要になる代わりに、1期未終了なら創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要です。自己資金が薄い方はBタイプを選ぶことになります。自己資金の考え方については自己資金なしで創業融資は受けられるかに詳しく書きました。

群馬での使い分け|私が相談者に伝えていること

整理します。

開業日が決まっていて時間がない方、自己資金が薄い方、まず1本目を確実に通したい方は公庫からです。判断が早く、創業期の実績がない状態を前提に設計された制度なので、通る確率が最も高い入口になります。

開業まで数か月の余裕がある方、将来的に設備投資や増加運転資金が見込まれる方は、制度融資を並行して進める価値があります。取引金融機関を早くつくることの効果は、数字に出るまで時間がかかりますが確実に効きます。

そして、どちらか一方しか使えないわけではありません。公庫と保証協会の限度額は別枠です。実務では、必要額を公庫と制度融資に分けて申し込むケースがよくあります。1,500万円が必要なら、公庫で1,000万円、制度融資で500万円という組み方です。片方が満額出なかったときの保険にもなります。

ただし同時に2本走らせると、それぞれに創業計画書と面談が必要になり、数字の整合も求められます。両方に同じ根拠で説明できる計画になっているか。そこが崩れると両方落ちます。いくら借りるべきかという設計そのものについては創業融資はいくら借りるべきかで書いています。

高崎で創業融資をお考えの方へ

公庫と制度融資、どちらから入るべきかは、開業予定日と自己資金と、事業の性質で決まります。一般論では決められません。

ミノラス会計事務所では、創業計画書の作成から金融機関との調整、面談の準備、そして融資実行後の高崎市への補助申請まで一貫してお手伝いしています。会社設立からご相談いただく場合は、設立の手続きも含めて対応します。事務所の考え方については代表挨拶をご覧ください。

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公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太