妻や子どもに給与を払っている|税務調査で家族への給与が否認される3つの見方と、残しておくべき記録

「妻に月25万円払っているんですが、調査で何か言われますか」

家族に給与を払っている会社は多く、それ自体は何の問題もありません。社長の妻が経理と電話番をしている、息子が現場に出ている。働いている人に給与を払うのは当たり前で、家族だからといって払えないわけではありません。

ただ、税務調査では家族への給与は必ず見られます。他人に払う給与と違って、「働いていなくても払える」「相場より多く払える」ことを、調査官も知っているからです。何を見られるのか、どうなると否認されるのか、何を残しておけばよいのかを書きます。

家族への給与は、3つの見方で判断される

調査官が家族への給与を見るとき、確認するのは三つです。

一つ目は、働いた事実があるか。会社に来ているか、何の仕事をしているか、どれくらいの時間か。出勤の記録があるか、本人に聞いて仕事の中身を説明できるか。妻が「経理をやっている」と言うなら、実際に帳簿を触っているか、銀行に行っているか、請求書を作っているか。ここで答えに詰まると、その先の話になりません。

二つ目は、金額が仕事に見合っているか。週に2日、電話番と簡単な入力をしている人に月25万円は、他人を雇ったら払う額ではありません。同じ会社に他の事務員がいれば、その人の給与と比べられます。いなければ、求人で同じ仕事を募集したらいくらになるかで見られます。

三つ目は、本当に払っているか。給与が妻の口座に振り込まれているか、それとも社長の口座に戻っているか、帳簿の上だけで現金払いになっていて実際には渡していないか。家計が一緒なので「どちらの口座でも同じ」と考えがちですが、調査では別の人への支払として扱われます。

三つが揃っていれば、家族への給与は他人への給与と同じように損金になります。一つでも欠けると、欠けた部分が否認されます。

否認されると、いくら払うことになるか

妻に月25万円、年300万円を払っていて、仕事の実態が週1日程度の事務で、同じ仕事を他人に頼めば年60万円が相当、と見られた場合を例にします。差額の240万円が「仕事に見合わない部分」として損金から外れます。

追加の税金は、法人税と地方税を合わせて概算で60万〜80万円。会社の利益の水準で変わります。これに過少申告加算税が1割乗って6万〜8万円、さらに申告期限からの延滞税がつきます。調査は3年分を見るのが普通なので、同じ状態が3年続いていれば、追加の税金も3倍です。

否認されても、妻が受け取った300万円は給与のままです。妻側の所得税と住民税は300万円で計算されていて、戻りません。会社の損金にはならず、個人では課税されている、という形になります。役員報酬を期の途中で上げた場合と同じ構造で、そちらは役員報酬を期の途中で上げたら、税務調査で否認されるの記事に書いています。

働いた事実がまったくない場合は、差額ではなく全額が否認されます。妻が会社に一度も来ておらず、仕事の中身を説明できない状態で月25万円を払っていれば、300万円全部が損金から外れ、社長への給与か、社長への貸付と見られます。

妻が「役員」と見られる場合

妻が登記上は役員ではなく従業員でも、実質的に会社の経営に関わっていれば、税務上は役員として扱われることがあります。社長と一緒に経営の判断をしている、取引先との交渉をしている、採用を決めている。こうした関わり方をしていて、社長の家族で株も持っていれば、役員とみなされます。

役員とみなされると、給与の扱いが変わります。毎月同じ額でないと損金にならず、賞与は事前に届け出ていなければ損金になりません。従業員として夏と冬に賞与を払っていた場合、役員とみなされた時点で、その賞与は全額が損金から外れます。年2回で100万円の賞与なら、100万円の否認です。

妻が経営に関わっているなら、最初から役員にして、役員報酬として毎月同じ額を決めるほうが、はっきりします。従業員の形にしておいて賞与で調整する、というやり方は、調査で一番突かれるところです。

金額の決め方|他人を雇ったらいくら払うか

家族への給与の額を決める基準は、一つしかありません。同じ仕事を他人に頼んだらいくら払うか、です。

週に2日、1日6時間の事務なら、群馬の事務パートの時給で計算して月6万〜7万円。フルタイムで経理と総務を一人でやっているなら、月20万〜25万円は普通にあり得ます。仕事の中身と時間が決まれば、額はおのずと決まります。逆に、額を先に決めて仕事を後から当てはめると、調査で説明できなくなります。

「所得税の負担を家族で分けたい」という目的で金額を決めている会社は多く、それ自体は否定しません。社長一人が年1,200万円を取るより、社長900万円と妻300万円に分けたほうが、家族全体の所得税と住民税は下がります。ただ、その300万円に見合う仕事を妻が実際にしていることが前提です。前提が崩れていれば、下げた税金に加算税と延滞税を足して戻すことになります。

残しておくべき記録は4つ

家族への給与で調査を乗り切るのに必要な記録は、他の従業員と同じです。家族だから特別に多く残す必要はなく、家族だから省いてよいわけでもありません。

・出勤の記録。タイムカード、出勤簿、スマホの勤怠アプリ、どれでも。日付と時間が残ればよい

・仕事の中身が分かるもの。本人が作った請求書、入力した帳簿、送ったメール。「何をしているか」を本人以外が見て分かる形で

・給与の決め方。雇用契約書か、せめて時給や月給と仕事の範囲を書いたメモ。役員なら株主総会の議事録

・本人の口座への振込記録。現金払いは避ける

四つのうち、一番抜けやすいのが一つ目の出勤の記録です。家族なので「いつ来ているかは分かっている」と思って記録を取らない。調査官は「分かっている」では納得しないので、形に残してください。

顧問税理士が確認しているべきこと

家族への給与が否認される会社では、顧問税理士が「奥さんは何をされていますか」と一度も聞いていないことが多いです。給与台帳に名前があり、毎月同じ額が出ている。それを仕訳として入力するだけで、中身は見ていない。

確認すべきことは三つです。家族の誰が、何の仕事を、どれくらいしているか。その仕事に対して額が妥当か。経営に関わっているなら役員にするか、従業員のままにするか。この三つを、給与を払い始めるときと、額を変えるときに税理士と確認していれば、調査で困ることはほぼありません。

家族への給与と並んで見られるのが、外注費として払っているものが給与ではないか、という論点です。こちらは外注費と給与の区分の記事に書きました。どちらも「人に払うお金」の中身を税理士が見ているかどうかの問題で、調査で見られる全体の流れは税務調査の流れの記事にまとめています。

家族への給与を、調査で説明できる形に整えます

誰が何をしていて、いくらが妥当か、役員と従業員のどちらにするかを一緒に決めて、残すべき記録の形までお渡しします。今の税理士からの引き継ぎは当事務所が行います。

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ミノラス会計事務所 公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太